ー新伝ー伝説を継ぐもの【3】

ー屋上ー

亮「……酷い、顔だな」

独「ははっ……」

亮「昨日いったい……あれからどうなってそうなったんだ。」

独「いや~俺もなんか知らないうちにこんな感じになって……」

亮「絡まれるタイプには見えないのにな…金とかとられたのか?」

独「いや、そういうのは全然……っというか、助けられたので」

亮「助けられたのにその傷か……」

独「ほとんどはその助けてくれた人にやられました。特にこの額の傷は頭掴まれてコンクリに叩きつけられて裂けました。めっちゃ血が出たのに傷が小さくてビックリです」

亮「目蓋とかは軽い傷でおもいっきり流血するから戦意喪失には持ってこいなんだよな……よっぽど喧嘩慣れしてるぞそいつ」

独「確かにめちゃくちゃ手際は良かったっす。壁に大男押し込んで撤退してましたし」

亮「んん?」

独「あ、いえ……」

亮「っで、どうなった?」

独「更に色々あってもう一回絡まれてなんやかんやあって無事帰れました」

亮「絡まれた時点で無事ではないな」

独「右頬と口の中と額がめちゃくちゃ痛いっす」

亮「災難だったな」

独「まったくです。」

亮「ま、これからは絡まれそうになったら逃げることだな」

独「……逃げる」

亮「足がすくんで壁ぎわに追いやられなきゃ逃げだせるもんだよ」

独「逃げるのは……イヤっす」

亮「気持ちはわかるけど……っていうか、お前って悩んでたんじゃないのか?」

独「悩んでます。けど、逃げるのは嫌だなって結論は出ました」

亮「ってことは……いや、まぁ、いいけどさウチ(神拳会)にくるか?」

独「いや、それは無理です」

亮「えらく即答だな……どうしてだ?」

独「俺……」

亮「あぁ……」

独「金ないんです。間違いなく月謝も入会費も払えません」

亮「そりゃ……えぇ……」

独「なぜか昔から金と女には縁がないのに絡まれるんスよね……俺をカツアゲしたって一銭にもならないのに」

亮「なんか悲しいな…」

独「天然の小不幸体質なんです。」

亮「小不孝?」

独「段差に躓くとか、泥が跳ねるとか些細過ぎて誰からの慰めも受けずに、かといって延々と後引くような事にならない程度の不幸が憑いてまわるんです。」

亮「お祓いいった方が良くないかソレ…」

独「いや、不注意とかどんくさいとかいわれたら終わりだし。それに事故とかには巻き込まれたこと無いんスよ」

亮「絡まれはするけど?」

独「はい。あ、でもチャリがパンクしたり自販機で買った飲み物がぬるかったりするのはザラっす。」

亮「暑い時にぬるいのも、寒い時にぬるいのも厭だな」

独「ホットコーヒー買ったのにアイスコーヒーとか、その逆はないのに確実にぬるいっていうのはそこそこうっとうしいっすよ」

亮「ある意味特異体質だなソレ」

独「しかも大体が個人で居る時にそうなるからめっちゃ寂し悲しいというオチです」

亮「まぁ……なんだ、頑張れよ。ほら、焼きそばパンやるよ」

独「うわっ、マジすかどうもっす。」
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