ー新伝ー伝説を継ぐもの【3】

ー池袋界隈ー

独「んっ……んー……後頭部痛い……。あの人、死ななくて怪我しないけど痛いことするのは本当に上手だなぁ……。」

そういいつつ充てもなく街をぶらついていた。喉が渇いてるのに気がついて自販機でミネラルウォーターを買って人の流れを見ながら、さっきのことを反芻する。正直あの人が言ったことは見ていたかのように正解していた。そして、去り際にこうもいわれた……逃げてもいい。

今から家に帰って暗い部屋でジッとしていればだんだん現実があいまいになってきて、次の日がくる。過ぎ去るのを待つ、いつもそうしてきたじゃないか……。自分がどうしなくても勝手に時間が解決してくれる。

「なんか向こうでケンカしてるぜ」

「え、マジ?見にいこうぜ」

独「……ケンカ?」

耳が聡いというかそのワードが耳に届いてしまって、着いていってしまった。表通りから入り組んだ裏通りに入ってやや開けた路地。所狭しと集まった人々の中心で二人の男が睨みあっている。どんな荒々しく暴力的なことが始まるのかと思ったが……決着は一瞬だった。殴りかかった男の手を片手でいなし、そのまま拳を顔面に打ちつけたかとおもうと、ハイキックで文字通り一蹴したのだ。

亮「……ふぅっ。終わりだ。もういいだろ」

「……」

「うわ、ダメだコイツ完全に気失ってる。いいよ、アンタの勝ちだよ行ってくれ。」

亮「あぁ、そうさせてもらう。」

独「あっ」

亮「ん?(デカッ)」

独「えーと、岡崎…さんっすよね?」

亮「あぁ、そうだけど……ん?その制服はウチの学校の……」

独「えーと、一回会ってるんスけど」

亮「……あっ。あぁ、言われてみればなんとなく思い出した。身長だけ」

独「確かに印象に残るって言ったらタッパしかないですもんね。俺」

亮「いや、そういう意味じゃないんだけど……こんな所で何してるんだ」

独「えーと……さん……ぽ?」

亮「なんで疑問形……。とにかくここから離れようぜ。」

独「あ、はい」





ーコンビに前ー

亮「って、なんかノリで着き合わせたけど用事とか無かったのか?」

独「はぁ、ただの散歩っスから」

亮「そうか。じゃあ俺は帰るから。お前も気をつけて帰れよ」

独「あっ、ちょっと待ってください」

亮「なんだ?」

独「今さっきのってなんすか?拳法?」

亮「空手だよ」

独「空手かぁ……なんかこう殴って来たのを防いで打ったみたいな」

亮「空手の手の動きで特徴的なのは受けた手がそのまま攻撃に使用できることだからな。仕掛けた側には手を戻す暇を与えなく攻撃するから避けることは困難だ。」

独「なるほど」

亮「まぁ、それでも体重は乗せられないから小手先程度の威力しかない。だから、さっきみたいに顔を打って、怯んだところに大技をかます。これが勝ちパターンだ」

独「でも、そんな上手くいくんですか?」

亮「言うが安だよ。俺だって勢いでやってるところあるし……実際失敗して弾き損じることだって多い。」

独「はぁ……」

亮「っで?」

独「っで?」

亮「いや、なんで呼びとめたんだ」

独「えーと……人生相談をしようかと」

亮「俺にぃ?」
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