ー新伝ー伝説を継ぐもの【3】
ー亜細亜通り:廃ビル内部ー
「すっー……ふっー……。」
奴は紙袋を被ったまま大きく深呼吸をくりかえす。本人は精神を集中しているのだろうが、傍から見れば実に大間抜けな絵面。こちらの集中を乱されそうになるのを振り払って柱の陰から睨んだ。右に大太刀、左に小太刀と抜き身状態で前に歩み出す。距離は空けているがフロア内部は広くない。あと、二歩、三歩も近づけば奴も居場所を察知できる。
なら、勝負は一瞬。弩躬は飛びだした。
「むっ!少年、自棄を起こしたか!蛮勇では命を粗末にするだけぞ!」
「自棄?違うな。矢っていうのは一度放たれたら帰り道がない。その覚悟を示すだけだ。」
「善かろう!その覚悟、見せてみい!!」
踏み込んで大太刀を横に払った。垂れ下がる配線を軽々と切り裂き鋭い銀刃が弩躬の首を掻っ切ろうとした。
「うおおおおっ!」
「なにいぃっ?!」
刃がのどに触れる寸前、弩躬の身長が頭ひとつ分低くなる。野球のランナーのようなスライディングでザリリッと音を立てて床を滑べる。自身の右親指の先と紙袋の中心が重なった瞬間、極限まで引いた弓を解放した。発射した側も、された側も視覚で捉えたのはダートが顔を撃ち抜いた所からだった。
「ぐぉっ…ンぉっ……?!」
鼻先、少なくともこめかみを圧し潰しさもなくば骨を砕かれた衝撃に奴は仰向けに倒れた。受け身も取らない所を見ると意識ごと撃ち抜けたみたいだった。
弩躬は両手を地面に着いて身体を引きづり柱に到着してようやく上半身を起こして背を預けてひと息ついた。
「はっ……ぐっ……あぁっ……野郎、最後っ屁に小太刀刺してきやがった。」
右足の裏から甲までしっかりと貫通し血塗れた刃が無機質に刃向っている。小太刀といってもナイフとは違って長い。ゆっくりゆっくりと膝を折って足を近づける。それだけで切れ味がけた違いらしくミチミチと足の裏の肉を開いていき、シャンプーの発射口のようにぴゅぴゅっと血が噴き出す。
どういう痛みなのかを脳が処理できず、ただ漠然とした痛覚として発し続ける。
「抜いたら駄目だ。刺したままにしとかないと……けど、こんなもんブッ刺したままじゃ歩けもしない。あぁ……抜いたら駄目だっていってるのにっっ!!!」
柄を握ってズルリと刀をひっこ抜いた。裏と表からプシャッと血が流れる。奥歯を食いしばり、肩を振るわせ叫ぶのを我慢しつつ、右腕のゴムを一本解いて足首に巻きつける。力いっぱい巻きつけるとようやくあふれ出続ける血の勢いが収まりだす。それでも完全に止まりはしない、想像以上の切れ味なのだとゾッとする。
「まぁ、それでも取り戻せ……」
「うぅ……」
仰向けに倒れたままだが奴は確かに唸った。そして、ゾンビのように状態だけを起こしてこっちを見た。どうやらダートは鼻先を穿ったらしく紙袋の下半分が真っ赤に血染まっていて今まで以上に不気味で恐ろしい格好になっていた。やつは立ちあがって大太刀の切っ先を地面に擦りながら近づいてくる。
「起きあがんなよっ!」
立ちあがっても片足じゃあ弓は引けない。壁にで背中を支え、右手を手弓に形作りセンセからもらったベアリングを放った。
バスッン!しっかりとした手応え。照準は合わせにくいが奴の右肩を穿った。しかし、多少怯んだだけでまだ止まろうとしない。
「貴殿の……覚悟は、受けた。なら、私を倒してみろ。倒しきれねば……貴殿を、断つ……!」
ぎぎっ……ぎぎっ……と刃先が床を切り裂きながら奴は近づいてくる。血まみれの紙袋で日本刀を持った男に殺されるなんていまどきB級ホラー映画でもあり得ない。ベアリングをありったけ撃ちつづけた焦りはしない。一発一発が膝や喉、確実にダメージに繋がる部位を狙撃していくが……止まらない。ダメージがないわけじゃなく、奴も覚悟を決めているのだろう。十数発の連射に……ついに弩躬は弾が切れた。
「ぐぉ……すっーーー、はぁーーーっ!!」
道着や袴に紅の斑点模様をつくり膝を着いた奴だが、すぐに立ち上がる。
「私は……負けん。負けるわけにはいかんのだ!」
「くっ、馬鹿野郎がっ……。」
刀を振り上げた紙袋男だが、右手首、大太刀握っている手を撃たれ刀が弾け飛ぶ。
「な……にっ?!」
「我が氣は「水」」
水と泥のを氣で練り上げ鋼鉄の弾を造る事が出来るならば……血液と土埃で出来ない通りは無い。
「鳥居流弓術:鳳羽落連撃(改)……!!」
背筋の力で壁から跳ねあがり前のめりになりながら、鍛え上げたゴムのような柔軟な筋肉と全身のしなりそしてこのゴムの反発力で手の中の血弾を放った。
「すっー……ふっー……。」
奴は紙袋を被ったまま大きく深呼吸をくりかえす。本人は精神を集中しているのだろうが、傍から見れば実に大間抜けな絵面。こちらの集中を乱されそうになるのを振り払って柱の陰から睨んだ。右に大太刀、左に小太刀と抜き身状態で前に歩み出す。距離は空けているがフロア内部は広くない。あと、二歩、三歩も近づけば奴も居場所を察知できる。
なら、勝負は一瞬。弩躬は飛びだした。
「むっ!少年、自棄を起こしたか!蛮勇では命を粗末にするだけぞ!」
「自棄?違うな。矢っていうのは一度放たれたら帰り道がない。その覚悟を示すだけだ。」
「善かろう!その覚悟、見せてみい!!」
踏み込んで大太刀を横に払った。垂れ下がる配線を軽々と切り裂き鋭い銀刃が弩躬の首を掻っ切ろうとした。
「うおおおおっ!」
「なにいぃっ?!」
刃がのどに触れる寸前、弩躬の身長が頭ひとつ分低くなる。野球のランナーのようなスライディングでザリリッと音を立てて床を滑べる。自身の右親指の先と紙袋の中心が重なった瞬間、極限まで引いた弓を解放した。発射した側も、された側も視覚で捉えたのはダートが顔を撃ち抜いた所からだった。
「ぐぉっ…ンぉっ……?!」
鼻先、少なくともこめかみを圧し潰しさもなくば骨を砕かれた衝撃に奴は仰向けに倒れた。受け身も取らない所を見ると意識ごと撃ち抜けたみたいだった。
弩躬は両手を地面に着いて身体を引きづり柱に到着してようやく上半身を起こして背を預けてひと息ついた。
「はっ……ぐっ……あぁっ……野郎、最後っ屁に小太刀刺してきやがった。」
右足の裏から甲までしっかりと貫通し血塗れた刃が無機質に刃向っている。小太刀といってもナイフとは違って長い。ゆっくりゆっくりと膝を折って足を近づける。それだけで切れ味がけた違いらしくミチミチと足の裏の肉を開いていき、シャンプーの発射口のようにぴゅぴゅっと血が噴き出す。
どういう痛みなのかを脳が処理できず、ただ漠然とした痛覚として発し続ける。
「抜いたら駄目だ。刺したままにしとかないと……けど、こんなもんブッ刺したままじゃ歩けもしない。あぁ……抜いたら駄目だっていってるのにっっ!!!」
柄を握ってズルリと刀をひっこ抜いた。裏と表からプシャッと血が流れる。奥歯を食いしばり、肩を振るわせ叫ぶのを我慢しつつ、右腕のゴムを一本解いて足首に巻きつける。力いっぱい巻きつけるとようやくあふれ出続ける血の勢いが収まりだす。それでも完全に止まりはしない、想像以上の切れ味なのだとゾッとする。
「まぁ、それでも取り戻せ……」
「うぅ……」
仰向けに倒れたままだが奴は確かに唸った。そして、ゾンビのように状態だけを起こしてこっちを見た。どうやらダートは鼻先を穿ったらしく紙袋の下半分が真っ赤に血染まっていて今まで以上に不気味で恐ろしい格好になっていた。やつは立ちあがって大太刀の切っ先を地面に擦りながら近づいてくる。
「起きあがんなよっ!」
立ちあがっても片足じゃあ弓は引けない。壁にで背中を支え、右手を手弓に形作りセンセからもらったベアリングを放った。
バスッン!しっかりとした手応え。照準は合わせにくいが奴の右肩を穿った。しかし、多少怯んだだけでまだ止まろうとしない。
「貴殿の……覚悟は、受けた。なら、私を倒してみろ。倒しきれねば……貴殿を、断つ……!」
ぎぎっ……ぎぎっ……と刃先が床を切り裂きながら奴は近づいてくる。血まみれの紙袋で日本刀を持った男に殺されるなんていまどきB級ホラー映画でもあり得ない。ベアリングをありったけ撃ちつづけた焦りはしない。一発一発が膝や喉、確実にダメージに繋がる部位を狙撃していくが……止まらない。ダメージがないわけじゃなく、奴も覚悟を決めているのだろう。十数発の連射に……ついに弩躬は弾が切れた。
「ぐぉ……すっーーー、はぁーーーっ!!」
道着や袴に紅の斑点模様をつくり膝を着いた奴だが、すぐに立ち上がる。
「私は……負けん。負けるわけにはいかんのだ!」
「くっ、馬鹿野郎がっ……。」
刀を振り上げた紙袋男だが、右手首、大太刀握っている手を撃たれ刀が弾け飛ぶ。
「な……にっ?!」
「我が氣は「水」」
水と泥のを氣で練り上げ鋼鉄の弾を造る事が出来るならば……血液と土埃で出来ない通りは無い。
「鳥居流弓術:鳳羽落連撃(改)……!!」
背筋の力で壁から跳ねあがり前のめりになりながら、鍛え上げたゴムのような柔軟な筋肉と全身のしなりそしてこのゴムの反発力で手の中の血弾を放った。