ー新伝ー伝説を継ぐもの【3】

ーとある空き地ー

弩躬「言い訳をするつもりじゃないんだがな…。だが、条件反射っていう言葉もあるだろ?思いのほかいい感じに蹴りが強くなってきたし、俺もスイッチが入っちゃってさぁー……ほら、今さらだけど俺もぶっちゃけ修行中の身だし手加減のメリハリがイマイチつかめなくてな…………」

独「……」

弩躬「ごめん、大丈夫か?」

独「俺はですね……」

弩躬「うん?」

独「今まで人生最大の事故というか体験した痛みは昔ガキの頃、排水溝ブロックに蹴躓いて足の爪二枚と右手首骨折と額を擦りむいたことなんですけど」

弩躬「なかなか盛大だな」

独「それでも今ぶん殴られた痛みのが記録を超えました。顔がめちゃくちゃ痛いです。あと内臓が潰れてます。さっき吐いて胃液も出ませんがめっちゃ辛いです。漏らしてないのが不思議です」

弩躬「本当に内臓が潰れてたら血が込み上がって吐血するから大丈夫だ。最悪ちょっと傷ついてるくらいだよ」

独「冷静な御判断ありがとうございます……」

弩躬「まぁでも……顔面に肘入れて、腹に膝入れたのは本当に悪かったよ。立てれるか?」

独「なんとか……。」

弩躬「ひとに教えるって難しいな」

独「みたいですねぇ。」

弩躬「じゃ、ラストにもう一回やるか」

独「鬼かなにかですか?」

弩躬「司るは鳥だが……鬼の知り合いはいるぞ。今度紹介しようか?地獄の炎を翳して全てを焦がし猛り狂いあらぶる咆哮で空を揺らしそうな鬼神から雷鬼と風鬼までいるけど」

独「人ですか?」

弩躬「辛うじて人だが、鬼と言ってもいいな。っていうか鬼だ。会いたいか?」

独「できれば遠慮したいです」

弩躬「じゃあ、来い」

独「……」

弩躬「ノリが悪いな……」

独「痛みに怯えてるんです」

弩躬「しかたない、それじゃあ……手弓でもしてみるか?」

独「てゆみ……って」

弩躬「俺が手に巻いてるコレだ。もしかしたら案外フィットするかもしれないぞ」

独「難しくないんすか?」

弩躬「連射とか片手で撃つのは難しいけど両手で撃つだけならパチンコとかと変わらないって。」
ずるるるるるっ……

独「長っ?!」

弩躬「コレは練習用のだから腕から肩までのサイズだ」

独「だから長いんだ……」

弩躬「いや、短い。本当のやつは鎧兼弓だから右腕から胴体まで巻けるサイズになるし。」

独「鎧?」

弩躬「これは戦車のキャタピラに使うゴムだからな。伸縮性と衝撃吸収が持ち味なんだ。まぁ……どっかのバカはその鎧ごと人のあばら骨撃ち抜いたうえ腕へし折ったのもいるけど」

独「へ?」

弩躬「いやいや、利き腕どっち?」

独「右です」

弩躬「よし、じゃあ……利き手を開いて、人差し指、中指、薬指を畳む。」

独「よいしょ……」

弩躬「それで小指と親指に力を込めてゴムを引っかけて……はい、ここの把なってる部分を左手で持って力いっぱい引っ張る。」

ぎ…ぎぎ…
独「あ、ヤバい。指いきそう…っていうか、硬くてひっぱれねぇ……。」

弩躬「親指の先がポインター代わりな。とりあえず一回それで離してみ」

ヴンッ…
独「ぐっ?!腕全体にとてつもない痛みと衝撃が……」

弩躬「コレが一連の流れな。はいじゃあ、ダートを一本貸してあげよう撃ってみようか」

独「ちょ、それ針ついてるじゃないですか?!」

弩躬「練習、練習、実戦練習」

独「……っというか今のだけで右手が限界来ちゃってて」

弩躬「撃たれるのと撃つのどっちが良い?」

独「えーと、これは先にゴムを掛けてからダートをセットするんですよね」

弩躬「そうそう」

ぎ……ぎぎ…
独「あ、コレ……めっちゃ怖い。撃ったら自分の腕に突き立てそうでめっちゃ怖い」

弩躬「めっちゃ誤射するぞ。俺も何回中指吹き飛ばしかけたか……」

独「こんなタイミングでなんてこというんだアンタ?!」

弩躬「なにごとも経験経験」

独「だからっ……てっぇ…あっ」

メキっ!バチン?!
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