ー新伝ー伝説を継ぐもの【3】

ー和龍軒:出入り口ー

寅「よう」

千夜「……右京島?」

寅「右京「山」だ。島は御伽ヶ島左近だ」

千夜「誰だそれ」

寅「しかも、左近の方はしらねぇのに間違えやがったのか……」

千夜「なんのようだ?闘んのか、コラ?」

寅「チッ……いきなり喧嘩腰か、あ?コラ?」

千夜「じゃあ、何の用だっーだよ、アァ?」

寅「用をいう前に喧嘩売ってきたのはテメェじゃねーのか、ァン?」

多恵「ちょっと、千。店の前でなにやってんだい?」

千夜「せっぇなぁ……店ん中ひっこんでろ」

多恵「なにいってんだいこの子は……そんなところでつっ立てたらお客さんが入れないだろ」

千夜「客何ぞまだきてねぇよ」

多恵「目のまえにいるじゃないの」

千夜「コイツは客じゃねーよ」

寅「客だよ」

千夜「あぁ?」

多恵「はいはい、アンタもあんあん唸ってないで中はいんな。ごめんさいねぇ」

寅「いや、慣れてる」

千夜「客なら客って先いえや」

寅「声をかけて絡んできたのはそっちだろ。間違うな」

千夜「あぁ?」

寅「あ゛?」

多恵「いいから入りなっての!」




ー和龍軒:店内ー

千夜「っで……何しに出てきた?」

寅「何がだ」

千夜「テメェがあの島からラーメン食いにだけ出てきたわけねぇだろ」

寅「……そうだよ。本当は蒼天塔でひと稼ぎするつもりで出てきたが当てが外れた」

千夜「どういうことだ」

寅「今は素手じゃなく得物……武器ありのウェイポンマッチしかしてないらしくてな。しかたなく街に繰り出してたんだ。っで、お前がラーメン屋だったの思いだして喰いにきた。それだけだ」

千夜「ウェポンマッチか……」

寅「ただ……妙な噂も聞いて来たけどな」

千夜「妙な噂?」

寅「そのウェポンマッチ連続優勝していた男が突然姿を消したそうだ」

千夜「勝ちすぎて消されたってのか?」

寅「いいや、突然出なくなったそうだ。それで連れ戻そうとした奴が切られた」

千夜「切られた?」

寅「日本刀ですっぱり……髪を」

千夜「……あ゛?」

寅「髪だよヘア」

千夜「いや、意味が分かんねぇ。」

寅「まともに相手する気がなかったんだろ。でも、そいつはウェポンマッチで何度も相手を切ってる。もちろん髪じゃなく肉をな、一番ひどい奴で手首をバッサリいかれたらしい。」

千夜「……それで?」

寅「当然、蒼天塔の奴らもスジモンも馬鹿にされたままじゃいられねぇから躍起になってさがしてる懸賞金付きで」

千夜「いくらだ」

寅「情報で五万、ハッキリとした居場所と写真付きでな。もし捕まえて蒼天塔に突き出せたら……十倍の五十万だ。」

千夜「なかなかデカイな」

寅「だろ…。」

千夜「そいつの写真くらいはあるのか?」

寅「……ないことはない」

千夜「なんだ?その歯切れの悪い言い方」

寅「見てみたら分かる」

ピラッ

千夜「……あ゛?なんだこの紙袋被った男は」

寅「常になんか妙なもん被ってるんだよ。紙袋、布袋、面……素顔は不明だ」
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