ー新伝ー伝説を継ぐもの【3】

ー窈の家の前ー

包帯男「ここか」

「ここなんだけど……あれ?」

包帯男「なんだ、ここまできて間違いとかいったら鼻を削ぎ落すぞ」

「自分が顔つぶされたからってあたるなよな……。」

包帯男「それでなんだ。」

「いや、こっちの家」

包帯男「なに?」

「表札見てくれよ。「小鳥遊」って……」

包帯男「こっちも小鳥遊、こっちも小鳥遊……どーいうことだ?」

「さぁ、そこまでは……」

包帯男「ちなみにどっちに入っていった?」

「こっち。」

包帯男「なら、こっちに行けばいい」

楓子「もしもし?なにをされてるんですかやよ?」

包帯男「……」

「……」

楓子「失礼。私はここの家を預かっている者です。ご用件があるなら私が伺いますが……その手に持つのは刀とお見受けしますが?」

「どーします?」

包帯男「この家を預かってるってことは小鳥遊悠の関係者だろ。黙らせちまえばいい」

包帯男は布に包まれたソレを解放する。日本刀……にも見えるソレは直刀ではなく湾曲し三日月の形をした刀だった。

楓子「……往来でいきなり抜くとは何者かは知りませんが少々痛い目にあってもらいましょう。」

「一応、いっとくけど二対一だぜ?」

楓子「二対一……?少々勘違いしておりませんか?」

包帯男「なに?」

楓子「既に双方私の間合いに入りこんでいますやよ」

一瞬、楓子の身体か揺れるとともに包帯男とツレの男の目のまえが真っ白に爆ぜた。

包帯男「がっ?!」

「ぐぇっ?!」

楓子「掃除用具で人は叩いたらいけない……ですが、時と場合によれば好きなようにしろ。箒は立派な武器である。師匠からいただいた名言やよ。」

楓子の声は顔を抑えている二人の後ろから聴こえる。打たれた顔を押えながら振り返ろうとしたその瞬間、パンパンッと音か二度鳴った。悲鳴も二つ。男二人は追いついていない、反応も、視覚的にも楓子のスピードと攻撃を捉えること叶わず滅多打ちにされ始めた。

包帯男「くそっ!なめんなっ!」

逆上した暴漢は手に持つ三日月刀をやみくもに振り回した。狙った訳ではなくともひと振りが楓子のもつ箒を打ちへし折った。

楓子「おっと……」

包帯男「ぺっ……さんざんやってくれたな」

楓子「……アナタの相方にトドメを刺したのは私じゃないですよ」

「うぅ……」

やみくもに振り回した刃は近くにいた男にもしっかりと当たって地面にうずくまっていた。そんなことを無視して包帯男は一歩踏み出す。

包帯男「さぁて……覚悟してもらおうか」

楓子「……」

包帯男「ビビったのかコラ」

楓子「その髪……どこかでお会いしましたかやよ?」

包帯男「なにを訳の分からないことを……喰らえやっ!」

窈「喰らうのはテメーだよっ!」

三日月刀を振り上げた包帯男の横っ面に窈の右ストレートがぶち込んだ。身体はそのままに首から上だけが四十五度ひん曲がって、時間差で身体も横に吹き飛んだ。壁に激突してようやく停止する。
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