ー新伝ー伝説を継ぐもの【3】

ー総合大学病院:待合所ー

悠「はあぁぁぁ……。」

紅「あぁぁ……。」

弩躬「ふぅー……」

柳「ほっほほ、災難でしたなぁ」

悠「いや……予想できてたけど止めるのが間に合わなかった」

紅「しっかし、暴れてくれたよなあの女。」

弩躬「首切ったのにあんなに動けるもなのか?」

柳「動脈は意外と硬い。自力で切り裂くのならカッターではなく出刃包丁でも突き立てないと一発で切るのは至難だからのぅ。意外と自殺も難しいという事ですなぁ」

紅「笑えねぇ。」

弩躬「ちなみにそろそろ全貌を聞かせてくれないか?」

悠「見たまんまさ、絵の着色に血液を使ってた。」

紅「ちゃんと順をおって説明しろよ」

悠「はいはい。ただし、おれの想像もはいる推理だからな。学校で聞いたところによると香は昔から絵で賞なんかもらってた。うちの学校も美術推薦で入ったらしいし。」

紅「へー、じゃあやっぱり才能はあったんだな」

弩躬「けど、なんでこんな真似を?」

悠「才能があった彼女にもある異変が訪れだ。ま、異変っていうかスランプだな。このコンクールに出展する絵が描けない、筆が進まない。そんなある日、なにを思ったか彼女は血で着色した。その色合いに歓喜した彼女だったが血は酸化して徐々に色が変化するのを知らなかったんだろうな。コンクールを受賞して美術館に飾られた絵をたびたび持って帰って着色し直したんだ」

弩躬「なるほど……それで血が必要だったのか」

紅「襲われた人らの理由は?」

悠「年齢が近くて性別を同じにしたかったんだろうな。自分と似てないと色も変わってしまうかもしれないって思って」

弩躬「じゃあ最後の自分が吸血鬼に襲われたっていうのは?」

悠「世間が騒ぎだしてマズイと思ったんだろ。それで自分の血を使ってるうちに貧血で倒れた」

紅「だから、自室で襲われたように言えたのか」

悠「実際に血は減ってる訳だ。病院で輸血さえしてもらえれば血は戻るからな。」

紅「しっかし、無茶苦茶だな」

柳「ノイローゼだったんでしょうな。しかし、この後はどうするんですかな?」

悠「さぁな、あとはカウンセリングでも受けさせて本人の自由にしてくれ」

弩躬「そういや、お前さ……この件には噛んでないっていってなかったか?」

悠「そのつもりだったけどな、呼び出されたんだよ」

弩躬「誰に?」

悠「校長。不穏な噂が出てる。君に頼むのは不謹慎だが是非調査をお願いしたいとさ。」

弩躬「お前のトラブルシューターの存在ってそこまで公認されてるのか」

悠「まさか……っか、校長がそんなことまでしってたのはおれだって驚いたし」

紅「ま、なんにしても一件落着だな。血は被ったけど」

弩躬「まったくの骨折り損だけどな」

悠「おれもだよ。」

紅「タダで動いてたのか?」

悠「調査はするけどおれからは何もしないって代わりに報酬はもらわなかった。普通に警察沙汰の事件だが……犯人が誰であっても、おれ通報するなりのなんなり、そこまで責任は取らない、けど再犯は起きないようにするって事で承諾したんだ」

弩躬「あーあ……センセに吸血鬼連れてけなかったよ」

悠「お前ら……捕獲するつもりだったのか」

紅「うん」

柳「ほっほほ。」
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