ー新伝ー伝説を継ぐもの【3】

ー美術館ー

紅「割と高いのな……入館料って」

弩躬「だな。」

紅「そういや、パンフもらってたよな」

独「はい、最悪これの説明をもじって感想にしようと思って」

弩躬「多分、それと同じようなことを考える奴とネットで拾ってコピペする奴がいるからやめといた方が良いぞ」

独「うっ……。」

紅「まぁ、宿題の件はどうでもいいとして……お目当ての絵はどこだ?」

京「この先みたいだぞ」

独「えーと、タイトルが「紅い人」……。あ、アレだ」

紅「こいつは……」

弩躬「へぇ……」

【紅い人】
洋風の部屋のなかからバルコニーに立つ女性の後ろ姿を描いている。夜らしく月が登っていて、どこか物悲しい。ただ、そんな絵のなかで目を引くのは紅色だ。月は黄、女性は白、夜ゾらや室内はダークブルーとディープブルーなのだが、あたりの至るところに紅が塗られている。端的にいえば一度完成した絵のうえから赤色を薄く引いているのだ。

紅「……」

弩躬「紅さん的にこの赤はいかがかな?」

紅「紅じゃなく、これは赤黒いだな。もしくは赤褐色」

独「芸術って難しいっすね……。ただ、迫力ってのは本物って感じかなめっちゃ威圧感というか迫力は有りますから」

紅「俺としては気になるのは、あの隅だな」

弩躬「すみ?」

紅「月の下、ほらコウモリが居るだろ。」

弩躬「あぁ……まさか、アレがか?」

紅「うーん……。不気味な感じは確かにするけど……」

ヴーン……ヴーン……

独「震えてますよ、携帯。」

紅「誰だよ……って、俺の携帯か……あ、悠だ!」

弩躬「マジか!!」

ざわざわ……
ざわざわ……

独「ちょっ、声大きいっすよ」

紅「わりぃ……もしもし?あぁ、電話したし、メールもな。そう、吸血鬼の件……え、何処にいるかって?美術館だ。驚くなよ?吸血鬼が……は?知ってる?絵から吸血鬼が出てくるって噂の事を?なんだよ……お前はどっから情報引っ張ってるんだよ。え、写メ取って送れって?あのな……美術館だぞ。電話してるのだってマナー違反なのに……わかったよ。やってみる。そんかしちゃんと電話出ろよな」

弩躬「なんて?」

紅「写メとって送れって」

独「写メって……目のまえに撮影禁止のマークありますけど」

紅「これも調査の一環だ……。独、ちょっと向こうで大声あげて皆の注意を引いてくれ。」

独「そんなことしたら俺が捕まりますよ?!」

弩躬「怒られるだけだって」

独「ソレも嫌!」

紅「じゃあ……こけるか?」

独「は?」

弩躬「向こうに向かって歩く途中ずっこけてくれ。」

独「どっちにしろ恥ずかしいわ!」

紅「ちっ……いいよ、もう普通にとるから」

独「えぇ……」

弩躬「じゃあ、三、二、一、ゴホン!!」
カシャ……

紅「よし、良いだろう。添付送信して……っと」

弩躬「じゃ、俺らはちょっと喫茶店でもいくか」

紅「だな。がりゅー迷子にすんなよ」

独「あっ、何処行ったんだろ。おーい、がりゅー」
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