ー新伝ー伝説を継ぐもの【2】
ー蒼天塔:武闘場ー
長く伸びた黒髪をひと息で束ねると三つに編み縛る。ここに立つのは二度目だ。伊達ではあるが眼鏡をはずして対戦相手を見据える。
アナウンサーが騒がしく吠えた。
『さぁさぁ、試合もはや三戦目っ!!今回のカードは有名人だ。なんたってここの開幕一番で闘った男っ!!偽物、コピー、ルイージ、ドッペルゲンガー……小鳥遊窈っっ!』
「だれがルイージだ……。配管工の弟じゃねぇぞ」
『しぃぃかーしっ!その男は本物に負けている……おー、哀れな紛い物』
「ぶっ殺す。あのアナウンサーからぶっ殺す!」
殺気の矛先が対戦相手から真反対側に向く。だが、それを感じとったのが鉄格子が飛び出した。簡単な作りにして強固な檻。こうなってしまえば檻のなかの獣は、もう一体の獣を狩って初めて出ることが可能となる。
「八つ当たりみたいで恰好悪いが……あのアナウンサーの分はお前にぶつけさせてもらうぞ」
「ふっ、もらった。」
開始の合図も関係なく対戦相手の男は、文字通り窈に飛びかかった。当然ただ真正面からの攻撃など避けるのはたやすい。身体を半身に振るい逸らした。これで鉄柵側に追い詰めたとふり返った先に……男の姿はなかった。セコンドとして鉄柵一本隔てて側に立つ匠が手を高く掲げていった。
「上だっ!!」
首を振り上げるとはるか上空、鉄柵にぶら下がる男の姿を確認した。猿のようだ。そして、その猿は飛び降りて来た。天井のライトと重なり奴の姿は光に呑まれる。ヘタに避けると直撃すると悟り、とっさに両手で顔面をガードした。それでももちろん落下してくる男にとっては動かぬただの的。ガードした腕ごと貫き蹴り飛ばした。重力+鋭角な蹴り。窈は叩きつけられた人形のようにはじけ飛んだ。
「ぐあっ……。」
吹き飛びながらも、床を叩きつけて受け身をとる。しかし、すぐに対戦相手の男はその場から消えた。またもこっちからは攻撃の届かない。高みにのぼった。
「ちっ……猿っていうよりスパイダーマンだな」
「トドメだ。頭を潰す。」
鉄格子を飛び次渡り合い。窈の死角から飛びかかった。本来なら良くて頸椎が折れる程度、最悪頭が潰れる勢いの蹴りが襲撃する。しかし……窈の死角でけあっても、セカンドの死角ではない。匠は叫んだ。
「左斜め上!!!」
「ナイスだっ!!」
窈はふり返りはしない。最初と同じ、身体を翻し降ってくる男の足を掴んだ。そして、床に叩きつける。バチンっ!!!ラバーマットを振り卸したような酷く切れのいい音が耳を貫いた。
とっさにつむった目を開いた観客が見たのは、床で大の字で動かなくなっている男だった。足はおおよそ人類が曲がってはいけない方へとひん曲がり、トマトでも叩きつけたように床一面に血の花が咲いていた。掴んでいる足を離して窈はオサゲを解いていった。
「跳躍力と木登りは得意みたいだが……甘いんだよ。ったく、お前のせいでパーフェクトバトル(完全無傷勝利)が達成できなかったぜ。」
AAAはこれで二連勝。この快進撃をよく思わないものが物言いをつけた。
「ちょっとまて今の仕合は無効だ。」
「なにっ?!」
「開始の合図が無かったじゃないか、これは無効試合だ。」
場内はどよめきだした。
長く伸びた黒髪をひと息で束ねると三つに編み縛る。ここに立つのは二度目だ。伊達ではあるが眼鏡をはずして対戦相手を見据える。
アナウンサーが騒がしく吠えた。
『さぁさぁ、試合もはや三戦目っ!!今回のカードは有名人だ。なんたってここの開幕一番で闘った男っ!!偽物、コピー、ルイージ、ドッペルゲンガー……小鳥遊窈っっ!』
「だれがルイージだ……。配管工の弟じゃねぇぞ」
『しぃぃかーしっ!その男は本物に負けている……おー、哀れな紛い物』
「ぶっ殺す。あのアナウンサーからぶっ殺す!」
殺気の矛先が対戦相手から真反対側に向く。だが、それを感じとったのが鉄格子が飛び出した。簡単な作りにして強固な檻。こうなってしまえば檻のなかの獣は、もう一体の獣を狩って初めて出ることが可能となる。
「八つ当たりみたいで恰好悪いが……あのアナウンサーの分はお前にぶつけさせてもらうぞ」
「ふっ、もらった。」
開始の合図も関係なく対戦相手の男は、文字通り窈に飛びかかった。当然ただ真正面からの攻撃など避けるのはたやすい。身体を半身に振るい逸らした。これで鉄柵側に追い詰めたとふり返った先に……男の姿はなかった。セコンドとして鉄柵一本隔てて側に立つ匠が手を高く掲げていった。
「上だっ!!」
首を振り上げるとはるか上空、鉄柵にぶら下がる男の姿を確認した。猿のようだ。そして、その猿は飛び降りて来た。天井のライトと重なり奴の姿は光に呑まれる。ヘタに避けると直撃すると悟り、とっさに両手で顔面をガードした。それでももちろん落下してくる男にとっては動かぬただの的。ガードした腕ごと貫き蹴り飛ばした。重力+鋭角な蹴り。窈は叩きつけられた人形のようにはじけ飛んだ。
「ぐあっ……。」
吹き飛びながらも、床を叩きつけて受け身をとる。しかし、すぐに対戦相手の男はその場から消えた。またもこっちからは攻撃の届かない。高みにのぼった。
「ちっ……猿っていうよりスパイダーマンだな」
「トドメだ。頭を潰す。」
鉄格子を飛び次渡り合い。窈の死角から飛びかかった。本来なら良くて頸椎が折れる程度、最悪頭が潰れる勢いの蹴りが襲撃する。しかし……窈の死角でけあっても、セカンドの死角ではない。匠は叫んだ。
「左斜め上!!!」
「ナイスだっ!!」
窈はふり返りはしない。最初と同じ、身体を翻し降ってくる男の足を掴んだ。そして、床に叩きつける。バチンっ!!!ラバーマットを振り卸したような酷く切れのいい音が耳を貫いた。
とっさにつむった目を開いた観客が見たのは、床で大の字で動かなくなっている男だった。足はおおよそ人類が曲がってはいけない方へとひん曲がり、トマトでも叩きつけたように床一面に血の花が咲いていた。掴んでいる足を離して窈はオサゲを解いていった。
「跳躍力と木登りは得意みたいだが……甘いんだよ。ったく、お前のせいでパーフェクトバトル(完全無傷勝利)が達成できなかったぜ。」
AAAはこれで二連勝。この快進撃をよく思わないものが物言いをつけた。
「ちょっとまて今の仕合は無効だ。」
「なにっ?!」
「開始の合図が無かったじゃないか、これは無効試合だ。」
場内はどよめきだした。