ー新伝ー伝説を継ぐもの【2】
ー長江組事務所・倉庫ー
「うおぉぉぉ!!」
雄たけびをあげる長江を無視して氷室はドアを閉めた。当然そんな薄いプラスチックの扉など薬でおかしくなった男を閉じ込められる訳がなく突き破って追いかけて来た。
「逃がすかあぁぁぁぁああぁ!」
「アホですね」
「アホだな」
氷室と炎銃は逃げてなどいなかった扉の両端に身を潜めて、左右から足を引っ掻けた。前しか見ていなかった長江は顔から倒れる。両手をついて上半身を起こすが二人は左右からその腕を蹴り払う。再び顔を床に打ちつける。血とよだれにまみれた顔が哀れだ。だが、間入れずに氷室は長江の後頭部を踏み潰していった。
「大人しく警察にいきませんか?」
「うぐぁぁっ!!」
話を聞く気がないのか聞こえないのか唸りながら自身の頭にある足に掴みかかるが氷室はさっと足をあげてその手ごと頭をスタンピングする。眉の端を下げて炎銃をみていった。
「こういう趣味は無いんですけどね」
「ふん……お前と組むといつも楽しむ間もないからイヤなんだよ。ピンチを装っといて何でもなく終わる。」
「私は今の状況で可能な限り最善手を取りたいだけですよ」
頭上で話している声だけは耳に届いていたのか踏みつけている足を払いのけて勢いよく立ちあがった。がむしゃらな力でバックブローを振るう。
「おっと」
「ふんっ」
氷室と炎銃はグルグルと回っている男の腕をすり抜けて次の部屋に逃げ込んでまた扉を閉める。
「うっうがぁぁぁあああ!」
踊らされている。どれだけ薬で痛みが麻痺していても、どれだけ薬で馬鹿力を発揮しても埋めることのできない圧倒的経験の差。そして、狭い部屋の中で彼らのグリップ性能に追いつくことが不可能に近い。一瞬の躊躇がさらなる悲劇を呼んだ。閉じられていた扉が外れて長江を押しつぶした。偶然ではない炎銃が扉へタックルして吹き飛ばしたのだ。
「トドメ刺すぞ」
「はい、では、一、二の……三!」
炎銃は顔と思われる位置を、氷室は下半身に狙いを定めて両足で飛び乗った。バギリッゴグリッ……骨が砕ける音がしてうごめいていた扉は不格好に盛り上がり動かなくなる。氷室はすぐに飛び降りたが炎銃は更に何度かジャンプを繰り返した。そのたびに何かが砕ける音が鳴る。
「そのくらいにしとかないと死んでしまいますよ」
「その時は王に任せればいい」
「やれやれ、怖いことをいわないでください。私は貴女が人殺しになる姿なんてみたくありませんからね。」
そういいながら踏み板にしたドアを退けると吐しゃ物と血を撒き散らし歪に曲がった手足した長江が白目をむいていた。潰されたゴキブリのように哀れだ。炎銃はいった。
「っで、どうするんだコレ?」
「運び出しましょう。今ならまだ王さんも追ってこないでしょうし」
「マジかよ……。」
「マジです。片足持ってください引っ張っていきますから」
砕けて曲がった足を掴んで氷室と炎銃は廊下へと出る社長室を迂回して廊下を渡る。幸いなことに長江の手下は全滅しているので邪魔も無く二階へと降りることは出来た。
「くそっ……なんで俺がこんな事を…。」
「乗り掛かった船ですよ。ここからならエレベーターを使えますしあと一息です」
「それはいいがこの血まみれ引きづって警察まで行く気じゃないだろうな」
氷室はくすりと笑った。
「そんなわけ無いじゃないですか。地下の倉庫に捨てて、我々が脱出してから通報するんですよ。あわよくば王さん達も片が付きますし」
「けっ……性質の悪い奴だ。」
エレベーターの前に付きボタンを押すと同時、ドスンっという何かが落下する音が聞こえた。
「うおぉぉぉ!!」
雄たけびをあげる長江を無視して氷室はドアを閉めた。当然そんな薄いプラスチックの扉など薬でおかしくなった男を閉じ込められる訳がなく突き破って追いかけて来た。
「逃がすかあぁぁぁぁああぁ!」
「アホですね」
「アホだな」
氷室と炎銃は逃げてなどいなかった扉の両端に身を潜めて、左右から足を引っ掻けた。前しか見ていなかった長江は顔から倒れる。両手をついて上半身を起こすが二人は左右からその腕を蹴り払う。再び顔を床に打ちつける。血とよだれにまみれた顔が哀れだ。だが、間入れずに氷室は長江の後頭部を踏み潰していった。
「大人しく警察にいきませんか?」
「うぐぁぁっ!!」
話を聞く気がないのか聞こえないのか唸りながら自身の頭にある足に掴みかかるが氷室はさっと足をあげてその手ごと頭をスタンピングする。眉の端を下げて炎銃をみていった。
「こういう趣味は無いんですけどね」
「ふん……お前と組むといつも楽しむ間もないからイヤなんだよ。ピンチを装っといて何でもなく終わる。」
「私は今の状況で可能な限り最善手を取りたいだけですよ」
頭上で話している声だけは耳に届いていたのか踏みつけている足を払いのけて勢いよく立ちあがった。がむしゃらな力でバックブローを振るう。
「おっと」
「ふんっ」
氷室と炎銃はグルグルと回っている男の腕をすり抜けて次の部屋に逃げ込んでまた扉を閉める。
「うっうがぁぁぁあああ!」
踊らされている。どれだけ薬で痛みが麻痺していても、どれだけ薬で馬鹿力を発揮しても埋めることのできない圧倒的経験の差。そして、狭い部屋の中で彼らのグリップ性能に追いつくことが不可能に近い。一瞬の躊躇がさらなる悲劇を呼んだ。閉じられていた扉が外れて長江を押しつぶした。偶然ではない炎銃が扉へタックルして吹き飛ばしたのだ。
「トドメ刺すぞ」
「はい、では、一、二の……三!」
炎銃は顔と思われる位置を、氷室は下半身に狙いを定めて両足で飛び乗った。バギリッゴグリッ……骨が砕ける音がしてうごめいていた扉は不格好に盛り上がり動かなくなる。氷室はすぐに飛び降りたが炎銃は更に何度かジャンプを繰り返した。そのたびに何かが砕ける音が鳴る。
「そのくらいにしとかないと死んでしまいますよ」
「その時は王に任せればいい」
「やれやれ、怖いことをいわないでください。私は貴女が人殺しになる姿なんてみたくありませんからね。」
そういいながら踏み板にしたドアを退けると吐しゃ物と血を撒き散らし歪に曲がった手足した長江が白目をむいていた。潰されたゴキブリのように哀れだ。炎銃はいった。
「っで、どうするんだコレ?」
「運び出しましょう。今ならまだ王さんも追ってこないでしょうし」
「マジかよ……。」
「マジです。片足持ってください引っ張っていきますから」
砕けて曲がった足を掴んで氷室と炎銃は廊下へと出る社長室を迂回して廊下を渡る。幸いなことに長江の手下は全滅しているので邪魔も無く二階へと降りることは出来た。
「くそっ……なんで俺がこんな事を…。」
「乗り掛かった船ですよ。ここからならエレベーターを使えますしあと一息です」
「それはいいがこの血まみれ引きづって警察まで行く気じゃないだろうな」
氷室はくすりと笑った。
「そんなわけ無いじゃないですか。地下の倉庫に捨てて、我々が脱出してから通報するんですよ。あわよくば王さん達も片が付きますし」
「けっ……性質の悪い奴だ。」
エレベーターの前に付きボタンを押すと同時、ドスンっという何かが落下する音が聞こえた。