ー新伝ー伝説を継ぐもの

ーとあるトレーニングジムー

トレーナー「いやいや、無理ですよ」

悠(?)「そこをなんとか……。時間が惜しいんだ。」

トレーナー「立つのがやっとの人間に何をさせれるんですか……。」

悠(?)「ミット打ちくらいなら……できる。」

トレーナー「できませんよ?!両手足が壊れてる人間にできる訳がない。」

悠(?)「できる、できないはアンタが決めることじゃない。俺の決めることだ。」

トレーナー「っ……知らないですよ。」

悠(?)「あぁ。」

ざわざわ……ざわざわ……

悠(?)「まるで見世物だな」

トレーナー「その格好で来てる時点で見世物と変わりませんよ」

悠(?)「はは……確かにな。さて……もういいよ」

トレーナー「いい訳無いでしょ。アナタが倒れたら誰が病院に連れていくと思ってるんです」

悠(?)「病院には既に追い出された後だ。」

ユウは松葉つえを渡して、サンドバックの前に立った。歩くたびに砕けた膝を固定してる金具がキィキィと鳴いた。動かさないように着けている意味を成していない。砕けた右手はもちろん包帯が何重にも巻かれて割れ物を梱包したように太い塊だ。右足を切り全力で手首が折れてる左手をサンドバックに当てる。
殴っているというより、軽く触れただけのような行動。ただ、それだけでユウは四肢に激痛が走り身をひるませていた。

トレーナー「やっぱり……無理じゃないでしょうか」

悠(?)「……」

返事は無いまま左の手でポスンとサンドバックを叩く。ポスン、パスン……力無い打撃音が空に消えていく。

トレーナー「……いつたい、どういう世界なんだ。この男をこんな目に合わせる世界なんて……」

獅子丸「伊達さん。」

伊達「おっ、獅子きてたのか。」

獅子丸「バイト終わりでね。ずいぶんボロボロなのがバック叩いてるけど……何アレ?」

伊達「知り合いなんだが……ちぃーっと変わったやつでな。どうしてもやりたいって聞かなくてな」

獅子丸「ふぅん……しかし、あんな怪我じゃ満足に動けないだろうに」

伊達「まったくだ。あんな怪我おうなんて……いったいどんな喧嘩したんだか」

獅子丸「あの人の名前は?」

伊達「小鳥遊さんだ。」

獅子丸「たかなっ?!」

伊達「高菜じゃない。小鳥遊だ。」

獅子丸「下は!下の名前は!!」

伊達「ユウだが……知り合いか?」

獅子丸「いや……俺も見学させて貰っていいかな」

伊達「俺は構わんが……すぐに終わると思うぞ」

獅子丸「いいって、見てるだけだし」



~数時間後~


ポスっ……ポスっ……

悠(?)「はぁはぁはぁはぁ……」

伊達「いったい……何時間ああしてる気だよ…」

獅子丸「すげぇな……。」

ユウのジャージは既にずぶ濡れで動くたびにギプスや包帯のすき間から飛沫が吹きだした。足元には水たまりができている。

伊達「止める…べきなのかな?」

獅子丸「俺に聞かないでくれよ。つてか、あれは止まる気がしないけどな……」

悠(?)「はぁはぁ……はぁ……!」

バスっ!!

獅子丸「音が……変わった?」

伊達「馬鹿な……折れてぐしゃぐしゃになった手だぞ。下手な事したら余計に骨が壊れる」

獅子丸「……」
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