ー日常ー街の住人達【10】

-十鳥動物病院:仮部屋-

十鳥に命ぜられてシロの餌を準備し始める。猫缶自体は用意してもらえているがいつも与えているものではない。

春彦「くそっ、時間時間時間時間。野生の動物は時間に縛られたりしないのに。」

シロの前に餌を運ぶも不満気に鳴き声を上げた。

シロ『ンナ~』

春彦「気にいらないか?仕方ないんだよ、獣医がコレしかくれないんだから。」

すると今度は撫でろというように頭を向けてくる。

春彦「ダメだよシロ…撫でてやりたいけどまだ仕事が……」

そんなとき、十鳥の声が聞こえてくる。

十鳥「あのガキまだ餌をやってるのか?よし早速あのバカ猫を…」

春彦「今行くよ!!」

慌ただしく部屋から出ていく春彦にフーーッとシロが唸った。

あらゆる仕事を一日中押し付けられ春彦はちりあえずあてがわれた部屋で倒れていた。

春彦「フ~~……やっと終わった…これが毎日続くのかよ……。」

シロ『にゃー』

シロがゲージの中から鳴くので開けてやるとすぐに膝に乗ってきた。

春彦「よしよし寂しかったか。でも、先は長いぞ。」

ゴロゴロと喉を鳴らし気持ちよさそうに微睡むシロだったが突然頭を撫でいる春彦の手に噛みついた。

春彦「痛っ!!はは、お前は相変わらず野生だなぁ。俺は犬みたいにコキ使われてるのに。」

シロ『ウ~~ッ』

そのとき、十鳥の怒声が飛んできた。

十鳥「ガキーー!!風呂を最後に使ったら掃除だろうが!!」

春彦「あーー!!わかってるよ!!クソッ!!」

シロを退けて風呂掃除に向かった。

それから数日、春彦は下僕のようにコキ使われ続けた。

十鳥「何グズグズしてんだ!猫がどうなってもいいのか!」

春彦「クソ獣医シロに触るな!掃除すりゃいいんだろ!!」

最初はいわれるまに太々しく仕事をしていたが最近では十鳥の罵声に文句を言い返して働くようになってきた。

明日香「(なんか…)」

春彦くん最近よく喋るわ。それに元気だし。まああの先生と居れば怒鳴りたくなるのも無理はないけど……あら、わたしったらなんてことを。

毎日毎日、次から次に仕事をされられ続けて一週間たった。春彦は仮部屋のベッドに寝っ転がって腹の上にシロを乗せてぼやいた。

春彦「…もうう一週間もコキ使われてんのに、なかなかたまらないな。小遣い貰うのは一瞬なのに、5万ってこんな大変な額だったのか……。」

シロ『ナァー』

春彦「でも……獣医の奴はムカつくし仕事はキツイけど……なんかやりがいがあるんだよな…金が溜まってお前の治療が終わっても、俺ここで働こうかな……。」
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