ー日常ー街の住人達【10】

-十鳥動物病院:治療室-

それを聞いて十鳥を右手を大きく開いてを突きだした。

十鳥「五万円だ」

明日香「へ?たった……?」

これには拍子抜けした500万とか平気で言いだす先生なのにと…。

十鳥「ただし五万円といっても親からもらった金じゃだめだ。時給500円泊まり込みでウチで働いてもらう。五万円たまったら治療してやる。」

明日香「ええっ?」

若い男「なっ……ふざけるなよ。待ってろ家に帰れば五万円ぽっち……」

ドアに手を賭けた瞬間、男の横顔スレスレに何かが飛んだ。カァンと音を立てて壁に突き刺さったのはメスだ……。

明日香は青い顔でひきつっている。

十鳥「一歩でも出たら猫の命は保障せんぞ。そうだな、実験に使うか……最近は実験動物も手に入りにくくてなぁ……。」

新たなメスを手に持って軽い調子でそう呟く眼鏡の奥の目は笑っていない。本気だという雰囲気を醸している。

若い男「わ、わかった…言う通りにするから白には手を出すな。」

十鳥「フン。親にはしばらく帰れないと連絡しておけ。猫の世話は仕事の合間に自分でしろ。」

若い男「くそっ!」

十鳥「……そういえばガキお前の名前は?」

春彦「春彦だよ!問診票に飼い主の名前で書いてあるだろうが!」

十鳥「ふんっ、田島好きなだけコキ使ってやれ。」

明日香「えっ、は、はい♪」

好きに使っていいと言うお達しなのでさっそく明日香は倉庫に連れていき治療中の馬、アスカミライの敷き藁を変える仕事などを手伝わせることにした。

明日香「フッフンフーン。敷き藁替えが終わったら、犬舎の掃除ね春彦君。」

春彦「……ケッ」

明日香「ケじゃないでしょ、返事はハイ。」

春彦「……」

明日香「ちょっと。」

注意をすると春彦は近くにあったバケツを蹴り飛ばした。

春彦「っせーんだよ!!野生の動物は仕事なんかしねぇ!!俺に命令すんな!」

十鳥「ほぅ、猫の命が惜しくないと?」

いつのまにか十鳥が倉庫の出入り口に立っていた。春彦は怒りに震えるも、猫の安否もだが平然とメスを投げつけてくるこの男には逆らってはいけないと、仕方なく仕事に戻る。

敷き藁替え、犬舎の掃除が終わったかと思うと今度は伸び放題になっている雑草を片付けろと命じられた。

春彦「くそっ、家に金なんかいくらであるってのに……」

文句を言いながらもせっせとカマで草を刈り取っていく。すると院内の窓が開いて十鳥がいった。

十鳥「おいガキ!猫の餌の時間だぞ!!時間通りにやれといったはずだ!」

春彦「くそっ!わかったよ!!」
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