ー日常ー街の住人達【10】

ー常春の国エメラダ:ミハイル宮殿ー

応接室でミハイルはあるカット済みのダイヤを初老の男性に見せた。

初老の男性「そっくりにカットしていただきまして、ありがとうございます。」

ミハイル「いえいえこちらも商売ですから。」

初老の男性「妻がイヤリングを落としてダイヤを割ってしまった時はどうしようかと思いました。」

ミハイル「ダイヤも天然の鉱物ですから衝撃を与えると割れる可能性があるのです。次はイヤリングではなく落としにくいピアスにされることをお勧めしますよ。」

初老の男性「わかりました。残ったもう片方にそっくりの石が手に入りましたらさっそくピアスを作らせます。」

男性はダイヤを丁寧に包んでジュエリーケースへと収納した。

ミハイル「珍しい材質のジュエリーケースですね。」

初老の男性「特別に作ったのです。フォッシルアイボリーマンモスの牙の化石です。それでは失礼します。」

見送り終わると、ミハイルはぽつりとつぶやいた。

ミハイル「化石か。僕は毎日薬をたくさん飲んでる。」

チコ「ええ、高血圧、糖尿病、夜泣き疳の虫にドケチ虫」

ミハイル「ケチに効く薬なんてあるのか?」

チコ「あったらいいなという話です。」

ミハイル「薬を持ち運ぶためのピルケースが欲しいと思ってたんだ。」

マリア「買えばいいじゃありませんか。」

チコ「ドラッグストアでも100円ショップにもありますよ。」

ミハイル「プラスチックの安物じゃあなぁ。」

チコ「プラスチックにダイヤをあしらったら?」

ミハイル「バランスが悪すぎるだろーが」

チコ「では、いっそのこと豪勢に金かプラチナで作りますか?」

ミハイル「重すぎるし成金趣味だ。」

マリア「なら、漆塗りの金薪絵ではどうです?」

ミハイル「時間がかかる。」

「「どないしろというんです」」

ミハイル「だから、今の客人のジュエリーケースをヒントにして化石で作ってみたらどうだろう」

チコ「化石ですか、面白そうですね。」

マリア「化石というとやっぱりアンモナイトですか?」

ミハイル「いやしくも国王の持ち物だ。平凡なものではいけない変わった化石はないか?」

マリア「変わった化石ですか?」

チコ「化石の事なんか全然知りませんからね。」

ミハイル「調べてみろ」

「「ラジャー」」

マリア「化石、英語ではFOSSEL(フォッシル)これはラテン語のFODERE掘る、動詞からきた言葉で掘りだされたものという意味があり……」

ミハイル「学術的なことはどうでもいい珍しい化石を探すんだ。」
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