ー日常ー街の住人達【10】

ー東京:十鳥動物病院ー

明るい髪の女性「バカ言わないでよ!!新しい馬が何頭も買える金額だわ!わたしが何も知らないと思ってるの!」

白衣の男「ああ、思ってるね。お前は馬の事をなにひとつ分かっちゃいない。」

明るい髪の女性「ふざけないでよ!わたしとアスカミライは……」

白衣の男「普通、馬一頭を完治させるのは何十人って獣医医師団の億仕事だ。」

明るい髪の女性「えっ…」

白衣の男「馬はお前の体重の10倍もある。当然薬の量も10倍。必要さ資材も人件費も人間の比じゃない。三千万は格安だぜ。もちろん保険は聞かんぞ。それから馬は平均20年は生きる。維持費は月40万だ。」

明るい髪の女性「そ、そんなに!?」

白衣の男「骨折治療には安価なピンティング法(※)があるがこいつは競走馬には向かない。圧迫プレート法(※2)を使うが、こいつは犬用のチタンプレートだがひとつ5万円。馬なら特注だ。敷き藁や輸送費はすぐ必要だから、今週中に頭金300万円は払ってもらうぞ。金さえもらえば手術はしてやる。」

※:Kワイヤー(キルシュナー鋼線)という先のとがった針金を骨に刺し、折れたところをつなげて固定する術式。 軽度の場合は皮膚を切開せず、皮膚の上から直接刺す場合もある。

※2:プレート(金属の板)をロックする特殊な構造により骨折部位を固定する新しい世代のプレートシステム。

明るい髪の女性「……」

白衣の男「フン。嫌ならここを紹介した奴と担当していた獣医師に電話しろ。その方が馬も苦しまずに済む。どうせお前のような「動物大好き人間」は途中で責任を持てなくなってその辺に捨てるんだ。」

明るい髪の女性「……お金は必ず払います。先生、アスカミライを助けて!」

白衣の男「……必ず払って当然だ。いいだろう。お前の年齢なら内臓を金に換える手もあるしな。」

明るい髪の女性「えっ?!」

白衣の男「ああ、そうだ。お前、名前は?」

明日香「あ、明日香です。田島明日香(たじまあすか)。せ、先生のお名前は?」

十鳥「十鳥健一(とっとりけんいち)だ。それともう一つ聞きたいことがある。このレントゲンは富沢教授が撮ったものみたいだが……田島、いったい誰からここの事を紹介された。富沢教授のもとに馬の患畜が届けられることはないだろう?」

明日香「ええと、ここの事を聞いたのは友達の友達?から聞きました。」

十鳥「友達の友達ぃ?なんだその怪しい噂みたいなのは名前を言え。」
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