ー日常ー街の住人達【10】

ー常春の国エメラダ:ミハイル宮殿ー

ミハイル「それができるならとっくにやってる。国土が狭いんだっつーとろーが」

ムーン「周りは海ですから海産物はいくらでも取れます。」

ミハイル「魚だけ食って生きてられるか半魚人じゃあるまいし」

マリア「私はいけますね。」

チコ「はは…。」

ミハイル「問題は主食だ。小麦か米、せめてトウモロコシが自給できればいいのだが10万人分の穀物を栽培するだけの土地がない。」

ムーン「なんとかなりませんか」

ミハイル「建設的なようで丸投げする奴だなお前は」

ムーン「恐れ入ります。」

ミハイル「何とかならないかと言われたってなんともなるか僕だって魔法使いじゃない。」

「そうでしょうか?」

ムーン1「デカンショ号。なにか意見があるのか?」

デカンショ号「先ほどから会話をうかがっていると殿下は最初から自給率アップをあきらめておられるように聞こえますが」

ミハイル「だって、しかたないものはしかたないだろう。」

デカンショ号「ですから、殿下は確かに魔法使いではありませんが天才科学者です。科学力で魔法のような結果を生み出せないでしょうか。」

ミハイル「……」

それを聞いて殿下の両目からポロリと何かが零れ落ちた。

ムーン1「あっ、目からうろこが落ちた!?」

ミハイル「いや、コンタクトレンズだ。」

チコ「コンタクトなんかけてましたっけ?」

ミハイル「今朝思い付きで」

マリア「思い付きでつけるもんじゃないですよね。」

ミハイル「そんなことはどうでもいい!デカンショ号よく言った!農業は専門外だから初めから深く考えることもしなかったのだが科学力を駆使すればなんとかなる!例えば10倍のスピードで成長する小麦なら作付面積は10分の1ですむわけだ!」

チコ「そんなことが可能なんですか?」

ミハイル「遺伝子の組み換えだ!!」

ムーン1「遺伝子のみかえかぁ。」

マリア「殿下、遺伝子組み換え作物には国民が抵抗を感じるかもしれませんよ。」

ミハイル「飢え死にするよりましだ!」

ムーン1「そりゃまそうですけど」

ムーン2「デカンショ号なんだか話がおかしな方向に進み始めたぞ。」

デカンショ号「殿下、私は例えばロボットを働かせて農作業の効率を上げるようなことを考えたんですが……。」

ミハイル「遺伝子のほうが手っ取り早い!」

デカンショ号「言わなきゃよかったかな。」

ムーンたちの心配をよそにミハイルの研究が始まりました。
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