ー日常ー街の住人達【10】

ー常春の国エメラダ:ミハイル宮殿ー

ここミハイル宮殿には「備蓄食料処分の日」というのがあります。

言葉のまんまの意味で非常災害用に蓄えられた食料を賞味期限が切れる直前に処分する日なのです。

処分と言ってももちろん捨てるわけではありませんみんなで食べるのです。

ムーンのひとりが箱に手を入れて一枚の紙を取る。

ムーン1「えーと……やったアルファ米だ。」

お湯を入れると20分、水でも40分でご飯に戻るアルファ米。

ムーン2「かやくご飯は美味しいな」

ムーン1「これなら毎日でも飽きない。」

マリア「私たちは甘いおかしタイプのハイカロリー非常食。これ1個で1日分らしいです。」

チコ「腹持ちはいいし、これはこれで悪くないね。」

ムーン「そこへいくと僕たちはカンパンだ。」

ムーン「パサつくし味気ないし」

ミハイル「文句をいうな僕も今年はカンパンなんだ。食えるだけありがたいと思え。」

ムーン「お言葉ですが本当の非常時でもないのに、なかなかありがたいとは思いにくいですよ。」

ムーン「だいたいどうして非常食を備蓄しなきゃいけないんです。」

ミハイル「どうして根本的なことが分かってないんだ。」

ムーン「すみません教えてください。」

ミハイル「いいか、我が国は国土が狭いこともあって食糧の自給率が極めて低い。ほとんど外国からの輸入に頼っているのだ。戦争や異常気象などで輸入がストップしたらどうなると思う。」

ムーン「食べ物が無くなります。」

ミハイル「そうだ。国民はあっという間に飢えに直面することになるのだ。そうなっては困るから国民が少なくとも一か月は食いつなげる非常食を倉庫などに備蓄しているわけだ。」

チコ「宮殿の非常食はわれわれが食べるとして国民のための恐らく、ものすごい量の非常食の処分は?」

ミハイル「軍隊や学校の給食に回している。」

ムーン「食べてしまったら、また買い直すわけですよね」

ミハイル「とうぜんだ。」

ムーン「なんだかもったいないですね。」

ミハイル「他に方法があるなら僕だって余計な金は使いたくない。しかし10万の国民を飢えさせるわけにいかんだろう。」

ムーン「一か月のストッがあると言っても戦争が一か月で終わる保証はないわけですし。」

ミハイル「何が言いたい。」

ムーン「食糧の自給率をアップしたら如何でしょう。100%にすれば輸入に頼らずに済みます。」

ミハイル「あのな」

ムーン「はぁ」
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