ー日常ー街の住人達【10】

ー常春の国エメラダ:ミハイル宮殿ー

ムーン「この人は本当は透視能力なんかないんです!埋められてるものを見通すなんてできっこないんです!」

オセロ「!!」

ミハイル「何を言っているお前だって透視で数字を言い当たられたじゃないか」

オセロ「えっ!?」

ムーン「そうです非番で休んでるというのは嘘です!僕はお手伝いをした本人です!だから僕は彼がマジシャンで透視術師でないことを知ってるんです!紅はこべから手紙が届いた後すぐに表敬訪問の話があったとき、タイミングが良すぎるきっと彼が紅はこべで上手いことを言って金庫を開けさせダイヤを盗むつもりに違いないと考え見張っていたのですが彼はダイヤに近づきもしなかった!なのに金庫の中はレプリカになっていて本物は外にあった!訳が分からないんです!」

ミハイル「ちょっと待てオセロ先生をマジシャンといい切る理由は!」

ムーン「呼ばれて壇上に登ったとき、観客から見えない角度のテーブルの上に一枚の紙があって」

【お願いします。007と書いてください。後で楽屋に来てくださればお礼を差し上げます。どうか私を助けてください。】

ムーン1「そう書いてあったんです!」

チコ「仕込みがあったんですね…。」

マリア「手品のネタは案外単純でシンプルだからこそわからないって言いますもんね。」

ムーン「それを見て、ああこの人はトリックを透視術師に見せかけているマジシャンなんだと気づき頼まれたから協力したんです!」

ミハイル「当てられてビックリしてたじゃないか!」

ムーン「協力ついでにお芝居しただけですよ!だからあのあと紙を忘れたふりをして楽屋にいって記念品をもらったんです!お疑いなら記念品を見せましょうか!」

ミハイル「なんだと!これが透視でないとするなら埋められた場所を知っていたのは君自身が埋めたからだ!ということは君は最初から本物を持っていて金庫の中は最初からレプリカだったことになる!これはどういうことだ!」

オセロ氏は観念したように全てを話すと約束し、場所を室内へと移した。そこでポツリポツリと話し始める。

オセロ「私の父は宝石商でした。」

ミハイル「もしや」

オセロ「そうです。殿下と交換したのは父です。父は生前様々な色や形や大きさの逸品と呼ばれるダイヤの多くを商いました。しかし父の死後日記を読んで知ったのですが父は取引の際人造ダイヤで作ったレプリカを顧客に渡していたのです。しかし、父の名誉のために申し上げますがそれは決して金銭ずくなどではなくダイヤマニア父が本物を手元に置いておきたいと思った…もちろん間違った考えですが…コレクターとしての一心だったのです。それを知った私は本物を皆さんにお返ししなくてはならないと思いました。幸い私は透視術という衣をまとったマジシャンで少しは世に知られていましたので。」

ミハイル「かつてユリゲラーが超能力と言うなのマジックで一世を風靡したように、だな。」

オセロ「ええ、まあ…この立場を利用することにしたのです。つまり紅はこべという盗賊を作りあげ、私の透視で彼の犯行を暴くという形で皆さんに本物をお返ししてきたのです。」

チコ「そんな手間をかけなくても素直に返せばよかったのでは?」

オセロ「それでは父のやったことが世間に知られてしまいます。バカな息子とお思いでしょうが父の名に傷はつけたくなかったのです。このレッドダイヤが最後でした、しかし……」

ミハイル「しかし?」

オセロ「ダイヤと金庫のことは前もって調べたがお付きの武官の事までは調べなかった。おかげで最後にドジをふみました。」

ミハイル「マジシャンとして勉強の余地あり、ですか」

オセロ「ですね。」

ミハイル「君がやったことは本物を返したことだ。犯罪でも何でもないこれからも透視術師オセロを応援しますよ。」

オセロ「あ、ありがとうございます!」

~~

ミハイル「しかしいいことを聞いたな」

チコ「は?」

ミハイル「真似するんだ。レッドダイヤを売ると言って客にはレプリカを渡すぼろもうけできるぞ。」

マリア「檻に入れましょうか」

ムーン1「頭が冷えるまで大人しくしててもらいます。連行しろ。」

「「はっ!」」

ミハイル「こらー!離せ!離さんか!!」
43/67ページ
スキ