ー日常ー街の住人達【10】

ー常春の国エメラダ:ミハイル宮殿ー

ミハイル「怪盗紅はこべなんて聞いたことあるか?」

チコ「さあ」

マリア「あのー」

ミハイル「どうした?」

マリア「そもそも紅はこべとはバロネス=オルツィオルツィ男爵夫人が書いた歴史ロマンでフランス革命を舞台にジャコバン党によってギロチンで処刑されそうになったフランス貴族たちを勇気と知略をもって国外に脱出させるイギリスの青年貴族の活躍を描いた恋と冒険の物語ですよ。盗賊なんか登場しません。」

ムーン1「誰かのイタズラじゃないですか」

ミハイル「しかし少なくとも大金庫にレッドダイヤがあることは知ってるわけだ。」

チコ「レッドダイヤというのは?」

ミハイル「世にも珍しい真紅のダイヤだ。一カラットほどの大きさの物が世界に二つしか存在しないというお宝中のお宝だ。以前、アメリカのある大物宝石商がわが国で取れた350カラットの見事なダイヤを欲しがったので彼が持っていたたレッドダイヤと交換したんだ。」

マリア「物凄い物々交換ですね。」

ミハイル「どちらにより価値があるか僕でさえ分からん。しかし僕としては満足のいく交換ではあったな。しかしなあ」

チコ「はあ」

ミハイル「大金庫を開閉するキーは僕の脳波だ。どんな怪盗でも中の物を盗むのは不可能なはずだが。」

チコ「やっぱりイタズラですよ」

ミハイル「イタズラの目的は?」

チコ「えっ」

ミハイル「それがわからないから引っかかるんだ。ハッキリイタズラだと判明するまで安心はできないぞ。」

ムーン1「殿下、昨日のオセロ氏から連絡がありまして国王陛下を表敬訪問したいとおっしゃってます。」

ミハイル「おおグッドタイミング!彼に本物かイタズラか透視してもらおう!すぐに呼べ!」

~~

宮殿の入り口まで近づいたオセロは数人のムーンたちに出迎えられた。

「「「お待ちしておりました」」」

オセロ「あっ、あなた方は昨日の……」

ムーン1「国王付きの武官です。」

ムーン2「お忍びで殿下のお供できのう一緒にいかせていただいたのです。」

ムーン3「素晴らしいショーで感動しました。」

オセロ「どうも……。」

ムーン1「どうぞ殿下がお待ちかねです。」

オセロ「あの…皆さんの顔が同じで見分けがつきませんがきのう数字当てのお手伝いをしてくださった方は……」

ムーン1「彼なら非番で今日は休みです。」

オセロ「あ、ああ、そうですか。」
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