ー日常ー街の住人達【10】

ーエメラダ銀座:公会堂ー

金髪に黒いサングラス、そして独特の黒いスーツを着た男が自分の前に立つ中年の男に手をかざした。

サングラスの男「あなたは……リスボン大学の出身ですね。」

「どうしてわかるんですか!!」

「「「おおぉぉっーー!」」」

あらゆるものあらゆる事柄を透視するというので今、世界中で評判の透視術師オセロ。彼の公演(ショー?)がエメラダ銀座の外れにあるエメラダ公会堂で行われているので、退屈していたミハイルがチコたちを連れて見に来ていました。

オセロ「アルハンブラでしょう」

「「「オーー!」」」

ミハイル「すごい、また当たった!」

チコ「まるで魔法みたいですね。」

ミハイル「本当に人の心が読めるのかな」

ムーン「本物の透視術なのかもしれませんね。」

ミハイル「しかしなんだな」

チコ「はっ?」

ミハイル「一般の国民と一緒に普通の客としてはいってきたがきっとみんな僕に気付いてサイン攻めにでもあうんじゃないかと心配してたんだ。」

チコ「そんな様子はありませんね。」

ムーン「きっとプライベートだから遠慮してるんですよ。」

ミハイル「礼儀正しい国民でけっこうだ。」

本当は……

「(ミハイル国王だ)」
「(目を合わせると厄介だぞ)」
「(知らんぷりしとこう)」

オセロ「さて透視を続けてきていささかくたびれてしまいました。最後に簡単な数字当てをやりましょう。そこのあなた。」

指をさされたのはムーンだった。

ムーン「え?」

ミハイル「おっ」

オセロ「そうあなたです。どうぞ壇上へ。」

ムーン「は、はい」

オセロ「私に見えないようにこの紙に3ケタの数字を書いてください。」

ムーン「……書きました」

オセロ「では四つに折ってポケットにしまって客席にお戻りください。」

ムーン「……」

言われるままの行動を取ってムーンは自分の席へと戻った。

オセロ「それでは数字を透視します。……見えてきました。」

「「「……」」」

オセロ「ほほおジェームズ=ボンドのファンでいらっしゃるようだ。」

ムーン「ハッ」

オセロ「書かれた数字は007」

ムーン「えええっ!?」

ポケットにしまった紙を取りだして開く、そこには007と書かれていた。

ミハイル「本物だ!!もしかしたらトリックなんじゃないかと心の隅で疑っていたが身体で隠すようにして書いた、あの数字を盗み見ることは絶対に不可能!ということは本物の透視術だ!」

オセロ「真の透視の世界へようこそ!皆さんまたお会いしましょう!」

実なの盛大な歓声を受けながら透視術は幕を閉じた。
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