ー日常ー街の住人達【10】

ーロイヤル=ハイネス=エメラダホテルー

グルメ警視「事故の報告はありません。私がホテルの支配人から連絡を受けてここについたのがPM1時難しい事件と見て取り、ただちに電化にお知らせしたわけです。」

ミハイル「うーん……警視、チェーンをかけている場合ドアはどの程度開きますか?」

グルメ警視「約10センチ」

ミハイル「いくら子供でもすり抜けるのは無理だな。」

チコ「外からチェーンをかけた可能性は?」

グルメ警視「真っ先に調べました。大昔のちゃちなチェーンならいざしらず、昨今の精巧なチェーンを外からかけるのは魔法でも使わない限り不可能です。」

ミハイル「ドアからは出ていない、窓から落ちたわけでもない、なのにお嬢ちゃんはいなくなっている。」

グルメ警視「まさしく不可能状況です。」

ミハイル「いや、そうじゃない」

グルメ警視「えっ」

ミハイル「窓から上に登ればいい」

グルメ警視「ここは12階ですよ」

ミハイル「ということは屋上まで3階。訓練を受けた兵士かレスキュー隊員あるいはアルピニストなら子供一人を抱えて登れないことはない。つまりあらかじめ屋上からロープを垂らしておいて、ホテルマンに化け、お嬢ちゃんにドアを開けさせる。ガスか何かで眠らせチェーンをかけてからしっかり背負いロープを登って屋上逃走したのだ。それ以外に考えられない。」

グルメ警視「推理としては成立していますが、しかし現実的でしょうか?」

ミハイル「宮殿からムーンを呼び出せ。試させよう。」

チコ「それは構いませんが人目につきませんか?」

ミハイル「子供が見て真似したらたいへんだな。警視、会場をよそに移せないかホテル側と相談してみてくれませんか」

グルメ警視「わかりました。」

ホテルの裏側に移動してくれることになり、表側はすっかりと人気が無くなった。連絡をしておいたムーンも到着して屋上から部屋にロープで伝い降りさせた。

ムーン1「ひゅー……」

ミハイル「3階降りるのに6分か、けっこうかかったな。」

ムーン1「壁面がツルツルしてるから厄介です。登るのはきっと10分以上かかると思います。」

ミハイル「あわせて16分か」

グルメ警視「殿下、下には多くの人がいました16分も人目に姿をさらすような手段を犯人が選んだとは考えにいですよ。まして登る時は子供を背負ってるんです。そんな姿で壁を登っていたら絶対誰かが目撃したはずですが……」

チコ「でも何の騒ぎにもなっていませんよね。」
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