ー日常ー街の住人達【10】

ーロイヤル=ハイネス=エメラダホテルー

ミハイル「なんだあれは?」

チコ「そういえば新聞に公告が載ってました。ホテルが客寄せのために外国から大道芸人を招いて子供向けのイベントを開催すると……今日だったんですね。」

ミハイル「ふうん。見ていきたいがみんなが名探偵の登場を待っている。」

チコ「残念でした。」

ホテルの中に入ると足早にグルメ警視が近づいてきた。

グルメ警視「殿下、ご足労おかけしまして」

ミハイル「いや」

警視に連れられてホテル内の一室まで移動すると困り顔の夫妻が一礼した。

グルメ警視「アメリカの宝石商ウィルソン氏とジュエリーデザイナーでもある奥さまです。」

ミハイル「事件の推移をうかがいましょう。」

ウィルソン「はい、午前10時、私たちは石の買い付けのためにしないのダイヤモンド取引所に向かいました。」

奥さん「一人娘のマリーアンに私たちが出たらドアチェーンをかけ絶対に外に出てはならないといい含めて」

ウィルソン「買い付けを終え昼食を取るために12時ちょうどにホテルに帰ってきたのですが見ると部屋のドアの下からメモが覗いていました。これです。」

ミハイル「絶望をひとつ……どういう意味です?」

ウィルソン「わかりません。」

ミハイル「6歳の子供が絶望なんて言葉を使うかなお嬢さんの字にまちがいありませんか?」

奥さん「ええ」

ウィルソン「そのときは娘のいたずらかと想い、メモのことはさほど気に留めずドアを開けようとしたところ言いつけ通りチェーンがかかっていたので娘を呼んで開けてもらおうとしたのですが……」

奥さん「反応がありませんでした」

ミハイル「ふうむ」

奥さん「マリーアンはとても良く寝る子なのです。ベッドの下や戸棚で眠り込んで姿が見えないと大騒ぎになったこともありました。」

ミハイル「やっかいなお子さんですね。」

ウィルソン「今度もそれかと思いましたがしかしあまりにも反応がないのでもしや転んで頭でも頭でも打っているのではと心配になりフロントに連絡したのです。」

グルメ警視「すぐにベルボーイがカッターを持ってきてチェーンを切りました。」

中に飛び込むように入ったが目につくところにマリーアンの姿は見えない。浴室やトイレ、戸棚も探したがどこにもいなかった。

ウィルソン「窓のカギはかかっていなかったのでもしかしてあやまって転落……とまで考えましたが」

ミハイル「窓の下には子供や大道芸人がたくさんいます。もし事故があったら大変な騒ぎになっているはずです。」
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