ー日常ー街の住人達【10】

ーリバプール郊外:ジェンキンスの屋敷ー

ミハイル「そしてその客と口論になって刺された。わかりませんね。同機は当然お金だろうし顧客の名簿を手に入れ怪しい人間をしらみつぶしに調べればいいだけの単純な事件のように思いますが」

ローソン警部「単純でないことがひとつ。ジェンキンスの頭部が持ち去られていたのです。」

チコ「えっ」

ローソン警部「怨恨からめった刺しこれはよくあることです。また憎さが余って首を切り落とすという犯罪者心理もありうるかもしれませんが……それを持ち去るというのは?家の中も周りも徹底的に調べましたが頭部はありませんでした。犯人が持っていったとしか考えられないのです。」

マリア「切り落としたあと沼に捨てたのでは?」

ローソン警部「残念ながら沼の底は柔らかい泥なので沈んでしまったらさらいようもありませんが、しかしなぜそのようなことをする必要があるのです。」

マリア「ええと、興奮して自分でも何をやってるかわからなくなったんじゃあ」

ローソン警部「ドアのノブや家具の一部の指紋が拭きとられていました、犯人が自分が触れたかもしれない場所を拭っていったのです。犯人はそれほど冷静だったのです。つまりなにか理由があったから犯人は頭部を持ち去ったのです。きっと合理的な説明がつくはずなのですが……だが準会員の渡しには荷が重い謎です。そこで殿下にご登場願ったわけです。」

ミハイル「ふうむ……死体は本当にジェンキンスですか」

ローソン警部「それは私も真っ先に考えました。別人の死体をジェンキンスに見せかけるために首を切り落としたのではないかとね。しかし三年前に受けた手術の傷がジェンキンスの身体にはあり病院の記録と合致します。」

ミハイル「とすると……ハッ、まずい!警部、犯人は更に犯行を重ねるつもりです!」

ローソン警部「えっ!?殿下はすでに犯人像を把握されたのですか!」

ミハイル「もちろん、犯人はボウリングが趣味の漁師です。」

チコ「……はあ!?」
マリア「……はあ?!」

ミハイル「犯人はボウリングが趣味の」

チコ「いや、聞こえなかったわけじゃ無くて余りにも意外な推理だったので」

ミハイル「なにが意外だいいか犯人はボウリングが好きだからいつもマイボールを持っている。しかし何らかの理由でバックからボールを出す必要が生じた。だが空のボールバックを持ち歩くのは不自然だし怪しまれる恐れがある。そこで頭部を切り落としビニールか何かで包んでバッグの中に入れたのだ。大きさといい重さといい青年男性の頭部ほどボウリングのボールに近い物はないからな。バックから出したボールはどうしたか、これは当然凶器であるナイフのようなものの処分に使用したと思われる。」
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