ー日常ー街の住人達【10】

ー常春の国エメラダ:路地ー

ミハイル「犯罪者が走ってくるからこれで引っ掛けるんだ!」

殿下は路地の反対側にいって壁に身を潜めた。

マリア「はあっ?」

ミハイル「いいか、あの猫は怪我をしていた!なにかにぶつかった証拠だ!しかし相手が自動車なら大けがをして動くどころではない!ということは相手は敏捷な猫でもよけきれない速度で走ってきた人間だ!しかし一流のアスリートがこんなところで全力で走っているはずがない!」

チコ「は、はぁ?」

ミハイル「しかし警察に追われる犯罪者なら死に物狂いで凄い速度で走るはず!だが本気で走ればやっぱり猫の方が早いから猫の後から犯罪者が走ってくると推理できるのだ!」

マリア「ものすごくあてずっぽな気がしますね。」

チコ「ねぇ……」

一応言われた通りに紐をもって様子を見ていると、バックを抱えた男が警察に追われながら走ってきたのだ。

警官「まてー!」

「うおぉぉっ!」

マリア「ホントに来た」

チコ「うわお」

驚きつつも紐をピンッと引っ張ると走ってきた男は足を引っかけて顔面からずっこけた。

警官A「おぉっ!君たちお手柄だ!」

警官B「そいつは郵便局に押し入った強盗なんだ!」

あれやこれやと言ううちに強盗は警官2人に取り押さえられて連行されていった。

ミハイル「どうだ素人」

「「……」」

ミハイル「僕の推理の凄さが分かったか。ふふん。」

チコ「腹立つけど反論できない。」

マリア「まぁ、私は実際素人ですから。」

それから数日後……

ムーン1「殿下、お手紙です。」

ミハイル「誰からだ?」

ムーン1「差出人はジェイムズ=ローソン」

ミハイル「ローソン?そんな名前の知り合いがいたかなコンビニが手紙を書くはずないし……ちょっと待ってろ。えーとヘンリー=アーチボルト=ローソン、オーストラリアでもっとも有名な作家。ジョン=ハワード=ローソン、アメリカの劇作家。」

チコ「……知り合いが人名事典にのってますか?」

ミハイル「こうしているうちに思いだすんだ。ローソン、ローソン……」

ムーン1「あのー手紙を読めばわかることでしょう。」

ミハイル「それはそうなんだが思いだせないのが悔しい」

ムーン1「ですから、思いだせないなら読みましょうよ。」

ミハイル「うーん、うーん」

ムーン1「読んでください。」

ミハイル「そうだなあ」

ムーン1「読め!!」

ミハイル「僕が思い出せなくてどうしてお前がカリカリしてるんだ。」

ムーン1「ふだんせっかちなおのれが回り道してるのを見るとイライラするんじゃい!」

次の瞬間、棍棒でボッコボコにぶん殴ってからミハイルは手紙を手に取った。
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