ー日常ー街の住人達

ー百目鬼相撲道場ー

寅「……」

雲水「どした若寅大将。なに突っ立てる」

寅「いや……アンタ、本当にスモウの先生してたんだな」

雲水「おう?どういう意味だ」

寅「本業はヤクザとばっかり思ってた」

雲水「がはははっ。そんな危ないことするわきゃないだろ。オレは道玄と違って真人間だぞ。」

道玄「どの口がいう」

雲水「お?なんでぇ、来てたのか」

道玄「近くによったものんでな。それにしてもなんだ雷小僧と風小僧はともかく寅小僧まで連れて……弟子入りか?」

寅「俺はボクサーだよ。今さら相撲に鞍替えはしねぇ」

道玄「ふっ……そうか。」

雲水「っで、近くによったってことは土産ぐらいあるんだろ」

道玄「酒はある。」

雲水「おお、さすがだな食いもんはいくらでもあるし早速飲もうぜ」

雷太郎「まだ昼」
風太郎「過ぎですよ?」

雲水「だから飲むんだろ」

風太郎「だからの」

雷太郎「使い方が」

風太郎&雷太郎「「新しい」」

道玄「……相変わらず珍妙な話し方をしているな」

雷太郎「以心」

風太郎「伝心」

雷太郎&風太郎「「してますからね」」

雲水「がはははっ。お前らはそういう芸人になったらいいかもな!」

雷太郎「嫌っすよ!」
風太郎「嫌っすよ!」

寅「アホらし……っと」

ドンッ
青年「おっと失礼しました。お怪我は?」

寅「いや、俺がよそ見してた悪いな」

青年「いえいえ、それでは失礼いたします」
ペコッ

寅「……」

雲水「あ、おーい!今日は帰って……いっちまったよ」

寅「相撲取りには見えなかったが関係者か?」

雲水「ありゃ、オレの息子だ」

寅「ふーん、息子か……息子?今のがか?!」

雲水「そうだがどしたよ?」

寅「いや、確かにそこそこタッパはあったけど似てねぇじゃん!」

雲水「ひょろくてナマっちろいからなぁ。まったく、もっと肉くわねぇからあんなんなんだよ。」

寅「そういうレベルでなくて血がつながってないだろ」

雲水「ってもなぁ、十数年かれこれ親子やってぇしなぁ?母(かかぁ)の股から出てくるのも見てるし」

寅「生々しい言い方すんな!出産に立ちあったって言えよ!!」

雲水「それによぉ、似てねぇ似てねぇいうが……コイツの娘はあの姫さんだぞ?」

道玄「……」

寅「それはどう考えても親子だろ。遺伝子レベルで目が瓜二つじゃんか」

雲水「それもそうか」

道玄「お前らな……儂だからいいが、神がいたら打たれとるぞ。」

雲水「がはははっ、そいつは怖ぇ怖ぇ。さっ、いいから中に入れ、入れ」
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