ー日常ー街の住人達【10】

ー常春の国エメラダ:警察署ー

ミハイル「あなたが犯人だ」

殿下にゆびを指されたスーツの老人はピタりと動きを止めた。周りからはざわざわと動揺が伝わってくる。

署長「ウォーレン判事が!?殿下、ゆゆしき告発ですぞ!証拠は!?どうきは?!」

ミハイル「署長さん、それを調べるのはあなたの仕事だ。僕は世界名探偵友の会の正会員として明晰な推理で犯人を特定しただけです。」

ウォーレン判事「ワシには現場不在証明(アリバイ)がある。」

ミハイル「僕が引っかかったのはそこですひとり暮らし老人が日曜日に鉄壁のアリバイを持っている不自然さ。署長さん、判事を犯人と想定して逆算すればどうやってアリバイをでっち上げたかわかるはずです。それに被害者が暗黒街の顔役である以上、四方と暗黒街の癒着……このあたりに同機のヒントがありそうだと考えるのに天才的推理能力は必要としません。」

署長「判事……任意での同行を求めます。」

ウォーレン判事「くっ……。」

判事は力なく椅子に座りこんで肩を落とした。


チコ「あの様子だと間違いなく判事が犯人ですね。」

ミハイル「無論だ。……むろーん!」

チコ「えっ?」

ミハイル「ギャグが思いつきそうだっただけだ。」

マリア「気になったのはアリバイの件だけですが」

ミハイル「いや決め手になったのは髭だ。」

マリア「なるほど…………ひげ?」

ミハイル「判事の左右の髭の長さが違っていたのだ。」

チコ「どういうことです?」

ミハイル「髭を生やしている男は髭をとても大切にする。間違っても左右の長さをそろえ損ねたりはしない。しかし判事の髭は揃っていなかったなぜか。今朝髭の手入れをするとき判事は精神的に動揺していたために手元が狂ったのだ。そして殺人を犯して冷静にいられる人間はいない。1+1は2だ。だから判事を犯人と断定したのだ。」

チコ「……あのー、お話をうかがってるとそれって直感というかもっとハッキリ言うと当てずっぼみたいなのもので推理とは違うような気がするんですが」

ミハイル「素人はこれだから」

チコ「(なんか腹立つなぁ)」

話していると目の前から猫がものすごい勢いで走ってきた。それを見た殿下は急に眼の色が変わった。

ミハイル「ロープをもってないか!」

チコ「私は一応ムーン隊から救急薬と簡単なサバイバルきっとを常に持ち歩いています。」

マリア「私はいつでも荷物を縛れるように強力な編み紐なら」

ミハイル「端をかせ!」
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