ー日常ー街の住人達【10】

ールプセン公国:議長閣下の屋敷ー

サマランタ『無駄だよ。俺は一度死んだがどうしても一人で地獄へ行くのがさびしくてなあ、お前さんを連れていくわけさ。』

そういうとサマランタは手に持ったナイフで議長を貫いた。地が飛び散ると同時に部屋の電気がおちる。

議長「あっ……あっ……」

サマランタ『痛みを感じないだろう。そのばずだ。たった今死んだのだからな。』

議長「たっ助けてくれ!」

サマランタ『遅いよ。あきらめな俺についてくるんだ。急がんと船に乗り遅れる。』

議長「……」

サマランタ『立てんか無理もない。お前さんの手足にゃ殺された者の怨念が絡みついてるからな、いや、そりよりなにより背中に余計なものを背負い込んでるから重くて立てんのだ。恐らく不正に蓄えた隠し財産の重さだろう。そんなものと一緒じゃ河を渡れんぞ。向こう岸に渡れば裁きを受けて少しは罪も軽くなるのかもしれんが、そのままじゃ川底に沈んじまう。殺した者の血と肉の泥に埋まって永久に浮かび上がれん。地獄の亡者の一番悲惨な運命だ。』

議長「どっ、どうすればいい」

サマランタ『吐きだしちまいな。どこにいくらあってどうしたら、取りだせるかお前さんしか知らない暗号や手順を書き記せ。あとで誰かが、それを見つけてその金を良い事にでも使ってくれたらお前さんの罪も軽くなるだろうよ。』

議長「わ、わかった……これで全部だ。」

ザナドゥー「よろしい。」

シュッと催眠ガスのスプレーを吹きかけると議長は一瞬で眠りに落ちた。同時に電気がついてミハイル達が入りこんでくる。

ミハイル「他の者も眠らせただろうな?」

床に転がっている刃が引っ込む精巧なナイフのオモチャを拾っていった。

チコ「はい、召使も警備のSPも全員48時間は覚醒しません。」

ミハイル「よし明朝、外部の人間が異変に気付いても何が起きたか判明するのは明後日だ。二日あればすべての隠し財産をこちらの口座に移せる。」

ムーン1「いろいろ資料を提供してくれた地下組織の試算によりますと隠し財産の総額はおよそ二千億ドル。」

マリア「ほっほー!」

チコ「おマリちゃん?」

マリア「いえ、すいません。よくもまぁ溜めこんだものですね。」

全員の視線が恐怖でひきつった顔のまま眠っている議長に向く。

ミハイル「ザナドゥー、こいつひとりを始末して、片がつくほど話は簡単じゃない。議長がいなくなっても№2、№3が出てくるだろうし議員や軍人民間人の中にすら、独裁体制で甘い汁を吸ってる連中がいるだろう。そいつらをみんなやっつけなくちゃならんのだ。そのためにはルプセン公国を根底から変える必要がある。新侯爵として公国の表舞台に姿を現し二千億ドルを武器に革命のための、気の遠くなるような戦いを続けることになるが……覚悟はできてるだろうな。」

ザナドゥー「もちろんだ。国のため母のために一身を捨てる所存だ。」

ミハイル「うむ、その気構えなら公国を救い、いずれは母子の名乗りをあげる日もやってくるだろう。およばずながら僕も力を貸すぞ。」

ザナドゥー「感謝する。」

ミハイル「ところでザナドゥー、謝礼の件だが二千億ドルの中から当然僕にいくらか回してくれるんだろうな。うぷぷぷっ。」

ザナドゥー「それはできない。革命のための大切な資金だ。」

ミハイル「おいこら!さんざん世話になっておきながら、なんだよその態度は!」

ザナドゥー「それとこれとは!」

チコ「せっかくいいお話で終わりそうだったのになぁ。」

マリア「あーあ」
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