ー日常ー街の住人達【10】

ールプセン公国:車内ー

議長「……」

運転手「閣下、お疲れのようですね。」

議長「うん?」

運転手「いえ…差し出がましいようですがお顔の色がおすぐれにならないようなので」

閣下は窓に映る自分の顔を見た、確かに最近公務がキツかったこともあり少々疲れが出てきている気もする。

議長「しかし、お前などが余計な事を……ひっ!?」

バックミラーに映る運転手の顔が肉が腐り落ちかけている骸骨になっていた。思わず小さく悲鳴を上げて座席から滑り落ちる。

瞬間、車が止まった。

運転手「閣下、どうなさいました?!」

驚いた様子でのぞき込んでくる運転手の顔は……もとの人間の顔だった。

議長「えっ!?あっ!いや!……なんでもない」

運転手「そうですか?では、出発します。」

運転手は静かに笑った。

自宅へつくと、玄関をくぐると同時に何人ものメイドや執事が出迎えた。

「閣下、お帰りなさいませ。」
「「「おかえりなさいませ。」」」

議長「皆さがってよい。ヘンケルを呼べ。」

執事「はっ?はぁ……ドクター閣下がおよびです。」

ヘンケル「うむ、また睡眠薬かな」

嘱託医であるヘンケルは薬を準備して議長の下へ向かおうとした。

マリア「ドクター、こちらへ」

ヘンケル「見かけない顔だな」

マリア「新しく入った家政……メイドです。閣下はあちらでお待ちです。」

ヘンケル「あっ、そう。」

新しく入ったメイドに連れられてヘンケルが向かう反対側で「ヘンケル」が歩いていた。

議長「ヘンケル、居眠りをして夢を見たのかもしれんが、もし幻覚を見た場合それは可能からくるものだろうか。」

ヘンケル「幻覚といいますと……このような?」

ずぃっと顔を近づけてきたヘンケルの顔が福笑いをかき回したような顔になっている。

議長「うわっ!?」

座っていた椅子から滑り落ち議長、その瞬間顔をこすると一瞬で普通の顔に戻ったヘンケルは議長に叫んだ。

ヘンケル「閣下、どうされました!」

議長「ああっ!?なっなっ!なんでもないさがれ!さがれ!」

ヘンケル「そうですか……私は下がりますが……。」

ヘンケルはゆっくり大きな柱の影に引っ込むと反対側から死人の顔色をした女性が現れる。

議長「!?」

同じように柱の影に入り出てくると今度は眼鏡をかけた頭から血を流す中年の男性、そして次はいくつもの銃創にまみれた若い青年と……入れ替わり現れていく。

議長はそれを見て大きな悲鳴を上げる。

『そうだ。みんなお前に殺された連中だ……。』

柱からボロボロに汚れた服を着たガタイの良い男が出てきた。

議長「おまえは!サマランタ!」

サマランタ『おぼえてたかい。そうさ、お前さんに処世された地下組織のリーダー、サマランタさ』

議長「くっ!!」

机の側まで這いずっていき引き出しから銃を抜いて引き金を何度も引いた。しかし、一度も発射されない。
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