ー日常ー街の住人達【10】

ー常春の国エメラダ:ミハイル宮殿ー

ミハイル「式典のおりなどに、何度かお会いしただけだが、優しい方で僕を可愛がってくれた。あの方なら話もしやすいな。」

ザナドゥー「親戚なのに式典の時に会うだけ?」

マリア「不自然ですね。」

チコ「確かに」

ミハイル「平民はこれだから」

ザナドゥー「いちおう侯爵」

ミハイル「侯爵でも、講釈でもド平民の素人町人の」

チコ「素人町人ってなんですか…」

ミハイル「一般ピープルのその他大勢の中で育ったから貴族社会の事は知らんのだ。貴族や王様は特権を持っているが反面不自由な点もある。いったん他家に縁付いたら元の家との関係は切れて気軽に里帰りなどはできない。たとえ親が病気でも見舞いに帰ることすらなかになか許されないのが貴族社会だ。」

マリア「へぇー」

ミハイル「伯母上が最後にエメラダに帰ってきたのは?」

ムーン1「えーと、殿下のお父上の葬儀の時ですね。」

ミハイル「なっ、そういう式典の時でなければ、親戚でもめったに会えない。貴族の事情が分かったかいちおう侯爵とド平民ども」

ザナドゥー「はあ」

チコ「なんでいちいち喧嘩を売るような言い方をするのか」

マリア「平民でも借金で首が回らないよりマシですよ。」

ミハイル「しかし、お前は運がいい伯母上が嫁いだのは公国でということは公爵が元首でその公爵のお妃となれば伯母上はファーストレディーだ。ルプセンは立憲君主国だから実権派人民議会にあり、元首は飾り物みたいなものだ、だがしかしファーストレディーならそれなりに、いや、それ以上に議会に対する影響力がある。つまり……」

ザナドゥー「つまり?」

ミハイル「伯母上を通して話をすれば、君の請願を認めさせるのは簡単だ。」

ザナドゥー「おお、では協力してくれるのか」

ミハイル「もちろんだ。古い友人じゃないか。謝礼はこれくらいで」

どっから出したのか電卓を叩いてみせる。

ザナドゥー「えーと……えっ、謝礼ってこの程度でいいのか?」

ミハイル「安いだろう?」

ザナドゥー「うむ、確かに安い……いくらかまからないか?」

ミハイル「お前も商人だなぁ。まからん!」

ザナドゥー「わかった。条件を飲もう」

ミハイル「諸君、聞いての通り、古い友人に力を貸すことになった、もちろん損得抜きで」

チコ「嘘ばっかり」

ミハイル「ただちに伯母上に面会を申し込め!!」
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