ー日常ー街の住人達【10】

ー常春の国エメラダ:ミハイル宮殿ー

ザナドゥー「まあ聞いてくれ、以前にも話したと思うが私は両親亡きあと、弁護士の奸計で施設に入れられた5歳の時だった。いろいろあったが結局施設を飛び出し、旅芸人の一座に拾われて、そこで変装術を学んだわけだが……そういう事情だから私は親のない子供たちに深い関心を持っている。君と別れてから、世界中を歩き回ったいろいろな国の様子を見るためだったが、中でも、中東のある国で目撃した状況は悲惨だった。長く続いた内戦のため、親や家族を失った子供たちが残飯をあさり泥水を啜って生きているのだ。何とかしてやりたいと思った自分に何ができるかを考えた。もちろん神ならぬ身で、不幸な子供をすべて救うのは不可能だ。しかし、そのうちの一部でも例え何人かでも助けるのが私の役目だと思うようになったのだ。」

ミハイル「それで?」

ザナドゥー「故郷の屋敷と領地を取り戻したい。両親が亡くなった後、どういういきさつで、誰の所有になったのかは知らないが本来の相続権は私にあるはずだ。」

ミハイル「話を聞いてるとその通りだな。」

ザナドゥー「正当な権利を行使して、屋敷と領地を手に入れ、そこに一人でも多くの子供を住まわせて仕事と教育をあたえたいのだ。そのため領事館を通じて故国ルプセン公国議会に復権のための請願書を提出した」

ミハイル「結果は?」

ザナドゥー「却下された」

ミハイル「えっ?」

ザナドゥー「私が侯爵家の正真の後継者であることを証明する複数の書類を添付しているにもかかわらず、だ。」

ミハイル「どういうことだ」

ザナドゥー「わからない。何度理由を尋ねても請願は認められないの一点張り、このままではらちが明かないので君の力を借りに来たのだ。君は、わがルプセン公国と親戚に当たるそうだな。」

ミハイル「そっだっけ?」

ザナドゥー「なぁっ?!」

チコ「なんで自分の血縁関係を知らないんですか……」

ミハイル「ちょっと待て自慢じゃないがエメラダ王家は大家族でな。親類の多くがあっちの王家の嫁に行ったりこっちの貴族に婿入りしたりしてるんだ。とても全部の関係は把握しきれない。ルプセンというと?」

ムーン1「はい、少しお待ちを家系図によると……ああ、コサージュ様が侯爵妃になっておられます。」

ミハイル「コラージュなんて親戚がいたか?」

マリア「コサージュ」

ムーン1「母上様のいとこのはとこの殿下には伯母様に当たる方です。」

ミハイル「あっ、あの伯母上か!」

チコ「いとこではとこで伯母様ってどういう人間関係なんですか?」

ムーン1「古い家系は複雑だから」
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