ー日常ー街の住人達【10】

ー常春の国エメラダ:ミハイル宮殿ー

チコ「だからなんで国王が芸をやらなくちゃならないんです。」

ミハイル「芸人として当然のことだ」

ムーン1「ですからね誰が芸人なのかこの際ですね……」

話ながら部屋から皆でていく。鏡が小さく唸っていたのに誰も気がつかないまま……。

次の日の夜……。

ムーン1「あー夜回りはたいくつだなぁ。さぼっちゃおうかなぁ。」

電気の消えた廊下を懐中電灯をもって見回っている中、一室から光が漏れているのが見えた。誰かがまだ仕事をしているのかと中を覗いてみると。

ミハイル「……」

なんと、書類らしきものにペンを走らせているのはミハイルだった。

ムーン1「殿下が仕事をしている!たいへんだーー!」

槍の雨が降ることよりもありえないものを見て他のムーンたちを集めた。

ミハイル「……」

最初は幻覚かと思ったがやはり殿下は仕事を続けていた。

ムーン1「なっ?」

ムーン2「本当だ」

チコ「信じられませんね。」

ムーン1「誰か何か言ったのか?」

ムーン2「いいや」

チコ「じゃあ、自発的に?」

ムーン1「天変地異の前触れだろうか」

ムーンたちの不安をよそに次の日の夜もその次の真夜中にも一生懸命仕事をするミハイルの姿が見えた。

ミハイル「ふわ~~よく寝た。おーい、朝飯の準備をしろ~。」

本日の(殿下の)朝食のメニューは丸々一匹の酢だこ、パン一斤を二つ用意してマヨネーズ一本を塗りたくってハムの塊を挟んだサンドイッチ、レタス、玉ねぎ、トマトを四つに割っただけのサラダ、バケツ一杯の味噌汁。

マリア「殿下ききましたよ。」

朝っぱらからタコにかぶりついてる殿下のテーブルにプリンアラモードが置かれた。

ミハイル「んが?」

マリア「真夜中のお仕事ご苦労様です。ごほうびのデザート一品おまけです。」

ミハイル「がぶぶ、ごっっくん!真夜中に仕事?僕が?」

マリア「またまたご謙遜を」

ミハイル「ハッハッ、なんだバレてたのか。まあ国王として当然のことだ。」

マリア「さすがですね。」

ミハイル「能ある猫は小判を隠すというからな!」

マリア「それをいうなら、能あるコアラはユーカリを隠すですよ。」

ミハイル「ハッハッハッ!」
マリア「ふふふっ。」

ちなみにミハイルは一切心当たりはなかった。むしろ夜中に仕事だと?なんで自分がそんな犯罪的な真似をしなくちゃならんのだ、とこんな調べてやると朝食の残りとデザートをしっかり食べきった。
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