ー日常ー街の住人達【10】

ー常春の国エメラダ:ミハイル宮殿ー

ムーン3「いわれ続けているうちに脳に擦りこまれてしまったんだー!」

チコ「するとパイライフというのは殿下の勝手な想像物ですか?」

「「そういうことになる!」」

結論が出たところだったが更なる報告が

「エメラダ新聞社がパイライフに襲撃されたー!!」

ムーン1「どうして創造物が新聞社を襲うんだ!」

ムーン2「知らんわい!」

ムーン1「とにかく新聞社だっ!」

駆けだしてドアを開けたムーン1だったがいきなり「パイライフだーー!」と叫び声をあげた。

ムーン2「見たこともないのにどうしてわかる!」

ムーン1「だって!」

パイライフ『……』

魚に似ず獣にも鳥にも似ていないが昆虫にもまた似ていないが生き物の形をして身体にデカデカと「パイライフ」と書かれた物体が2つほど入ってきた。

「「「……」」」

皆が停止するなかチコが後ろに回ってみるとチャックがついている。おろしてみると見ると案の定なかからミハイルが現れた。ちなみにもう一体の方からはマリアが出てきた。

ムーン1「きさまかっ!」

ミハイル「貴様とは何だ!」

チコ「マリアちゃんまでいったい何を…」

マリア「いや、それが殿下に頼まれまして、いろいろと協力していたんです。」

ムーン1「なぜこんなことを!」

ミハイル「CIAに潜入している黒ムーンから、我が国の核兵器の有無を確かめるためにエージェントが派遣されたと連絡があり密かに内偵していた。ところがそのスパイはどうやらアマチュアらしくて、かえって正体がつかめなくなった。なぜならアメリカからは多くの人間が毎日のようにやってくる。商人、学者、政治家、観光客その誰もがスパイの可能性があるプロなら身元を調べれば何かが出てくるものだがアマチュアだとそうはいかない。本来の身分で来ているはずだから、どう調べてもボロは出ないのだ。そこで僕の変装のひとつであるパイライフの登場となった。災厄の前触れであるパイライフが現れ実際に事故が継続すればスパイがその事態を利用するに違いないと思ったからだ。」

マリア「核兵器=事故というのは自然な連想です。スパイがどういう行動をとるかはわかりませんがパイライフと核を結び付け、国民の不安をあおり、核兵器をいぶしだそうとすることは明白でした。」

ミハイル「案の定エメラダ新聞社に嘘の目撃情報が寄せられた。あとは新聞社のコンピューターから逆ハッキングして発信元を確認すればよかった。発信地はこの宮殿、そして宮殿を出入りした記録を調べたところ、当時宮殿内に居たアメリカ人はただひとり……君だけだ。」

トム「……」

ムーン1「ええっ!?」

ムーン2「トム君が!?」

トム「そのために貨物船を沈めジャンボジェットを破壊したんですか」

ミハイル「気にするな、たっぷり保険が掛けてあるからかぇってもうかる」

チコ「恐怖で人事不省におちいった警官は?」

ミハイル「催眠術ですごく怖いものを見たと思いこませただけだ。術を解けばすぐ正気に戻る。それより……トム君と言ったかただちに国外退去を命ずる。」

トム「わかりました。その前にひとつだけ。」

ミハイル「なんだ」

トム「エメラダには本当に核兵器があるんですか」

ミハイル「あるかもしれないしないかもしれん。それは僕だけが知っていればいいことだ。」

トム「恐ろしい人だ。あなたの心の中にこそパイライフが住んでいるのかもしれませんね。失礼します。」

ムーン1「殿下、われわれも質問が!」

ミハイル「うん?」

チコ「パイライフってなんですか!」

ミハイル「それも秘密だ」

「「「今度の事件は欲求不満が残るーー!」」」

というわけで、なんか満たされないまま今回のお話はここまで。
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