ー日常ー街の住人達【10】

ー常春の国エメラダ:ミハイル宮殿ー

その日、宮殿では朝からムーンたち全員の召集がかかった。普段は定時になると各々の仕事を始めて殿下をひっ捕まえたり、殿下の悪質なイタズラから必死に逃げたり、殿下が原因の厄介ごとに悩まされたりするのだが……。

ミハイル「全員そろったか?」

ムーン1「宮殿内職員は皆揃いました。」

ミハイル「よし、おい、焼肉のタレ。紹介ししろ。」

チコ「チッ……。はい、みなさん、ご注目ください。本日から宮殿の清掃等を担ってくださる家政婦の夢前マリアさんです。」

殿下に一発舌打ちをぶつけて割烹着姿の少女を紹介した。

マリア「ご紹介にあずかりました。夢前マリアです。おマリとおよびください。アラファト家政婦協会からうかがいました。至らないところもあると思いますがよろしくお願いいたします。」

家政婦と聞いてもっと妙齢のおば……お姉さんかと思いきや殿下とそう年も変わらない子供だった事にムーンたちが少しざわついた。

ミハイル「彼女は若く見えてもプロだ。この通り身分証にもちゃんと18歳と記述されている。うーん……良くできた偽物だな。」

マリア「はい、CIAの方が作ってくれた完璧な偽物です。」

「「「えぇ…」」」

チコ「コホン、おマリちゃんには一週間をかけて宮殿内全域の清掃と必要な場合の洗濯やお三度の準備やその他諸々のことをお願いしてやっていただきますが……基本的には掃除がメインのお仕事です。」

ムーン1「あのー殿下、必要とあればお願いというのはというのは?」

ミハイル「毎日掃除から何百人分の料理などやらせるわけにはいかんだろう。」

マリア「大丈夫ですよ。プロですから。」

ミハイル「違う。お前の心配をしているのではない。料金の話だ」

「「「はいぃ?」」」

ミハイル「毎日フルで全部の仕事をさせると恐ろしいほど金がかかる。だから、基本は掃除だけの料金で働いてもらって必要に応じて追加の仕事をやらせるということだ。」

ムーン1「つまり……料理を作って欲しいときは、そのつどお願いして料金を払うと?」

ミハイル「そうだ。ちなみに僕は払わんからお前らが楽したいのならお前らが料金を払え。」

「「「ええっ!?」」」」

ミハイル「当たり前だ!そもそも家政婦自体、お前たちがちゃんと宮殿の掃除もやっておけば雇わなくていいんだぞ!」

ムーン1「やってないわけじゃないんですよ!他の仕事で手一杯なんですよみんな!あと、すぐに殿下が暴れたりするから!」

「「「そーだそーだ!」」」

ミハイル「やかましいっ!」

チコ「……こんな職場でごめんね?」

マリア「いえいえ、楽しそうですし何故かあのミハイル殿下からは私近い物というか親しい物を感じるんです。」

チコ「えぇ…」

ワールドクラスのドケチで守銭奴二人なのだった。
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