ー日常ー街の住人達【9】

ー常春の国エメラダ:ミハイル宮殿ー

夜の宮殿内は人気もなくなり薄暗く不気味である。だが、そんな夜の宮殿内をライトをもって歩くムーンがいた。

ムーン「あーあ、ひとりで夜回りは大変だ。」

ぼやいているとライトの先に何かが写った。一瞬ギョッとして立ち止まるが、よく見てみるとミハイル殿下だった。

ミハイル「……」

ムーン「あっ、なんだ殿下。こんな夜中になにをしてるんです。」

ミハイル「……」

何も言わない殿下の顔が突如どろりとずれ始めた。そしてバターが溶けていくように全身がドロドロの粘液状になって飛びかかってきた。

ムーン「うわーーーーっ!!」

叫びながらバッと身を起こすと……そこは自室でベッドの上ではないか。夢……どうやら悪夢を見てしまっていたようだ。

嫌な目覚めのまま着替えをして執務室へと向かって自分の席へと着いた。ガヤガヤと他のムーンたちは仕事を始めるが自分はどうにも手が進まない。

ムーン1「おい、モーソー号なにをグッタリしてるんだ。」

モーソー号「ゆうべ、よく眠れなかったんだ。」

ミハイル「なにをいっている。眠れなかったぐらいで仕事をさぼるな。」

モーソー号「あっ、化け物」

ミハイル「誰が化け物だ!!」

モーソー号「ゆうべドロドロに溶けてたじゃありませんか!」

ミハイル「バケモノ!」

モーソー号「えっ」

ミハイル「いや、バカモノ!そんなものは化物とは言わん!本物はこうだ!」

そういうと、殿下の顔が真っ二つに裂けて中から得体の知れない肉色の触手だらけで一つ目の化け物が飛び出してきた。

モーソー号「ぎゃああああっ!」

チコ「モーソー号さん!?」

モーソー号「ハッ……!」

声をかけられてあたりを見まわすと職務室で自分の席に座ってた。

ムーン1「おいおい、居眠りして大声を出すな!びっくりするじゃないか!」

モーソー号「えっあっ……また……」

チコ「いったいどうしたんですか?」

モーソー号「それが……夢……へんな夢が……」

ミハイル「どうした?」

モーソー号「ハッ、わーーーっ!!」

殿下が入ってくるとモーソー号は顔色をかえて出ていってしまった。

ミハイル「なんだ?いったい何を騒いでる。」

チコ「それがおかしな夢を見たらしいんです。」

ミハイル「夢~?夢なんかにビビって、わーとかきゃーとか言ってるのか……アホか、まったく。」
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