ー日常ー街の住人達【9】

ー常春の国エメラダ:ミハイル山高台ー

見間違いかと思おうとしたが、あんなへちゃむくれの顔を見間違うはずがない。しかし、毒は確かに入れた、十分な致死量を盛った。

なら、なぜ生きているのか……。

もしかしたら、曲がり間違って毒ではないものを用意してしまったのかと、つま先にほんっのすこーーしだけ毒をつけて舐めてみた。

七転八倒、阿鼻叫喚、嘔吐悶絶、もんどりおんどり……。

~~

ほぼほぼ死にかけたがMJはなんとかホテルまで逃げ帰った。

毒は完全に……効く。
身をもって体験したのだだから間違いない。

それなのにターゲットはピンピンしていた。あいつは不死身なのか……。いや、そんなことはありえない。爆殺の時と同様、毒殺に対しても対抗策を講じていたと考えるべきだろう。

体調の回復と落ち着きを取り戻し、改めて送られていた資料に目を通す。

MJ「ターゲットはぬらりひょん拳法の達人と書いてある。どんなものか知らないし体術で引けを取るとも思わないが……しかし、もしかして少し時間がかかって部下たちが駆けつけてきても困る。接近戦は避けた方がよさそうだ。となると……。」

三度、宮殿内に侵入した。
そして今度は銃ではなくボウガン、これなら音もなく確実である。

ミハイル「……」

MJ「いまだ!」

背後からの一射、しかし、どこからか光線が走り矢が空中で消滅してしまった。

MJ「なっ!?なんだ今のは!レーザー!?この宮殿の地下には大コンピューターがあるらしいがそいつのしわざか?もしかするとそいつがすべてコントロールしているのだとしたら爆殺の時リモコンを妨害された可能性もある。冗談じゃない接近戦がどうのこうの言ってる場合じゃない下手をするとレーザーで狙い撃ちだ!」

ボウガンを捨てナイフを持ち出すと走って殿下の背中に突き立てた。

ガキンッと金属音。

ミハイル「……」

MJ「なんだ?!」

突き刺した相手をひっくり返してみると生身ではない、金属でできたロボットだ。

『殺し屋君、そこまでだ』

MJ「!!?」

倒れているロボットのスピーカーから声がする。

ミハイル『僕は国王としてみんなに愛されているしかし暗殺の心配もしている。』

MJ「いってる意味が分からん!」

MJ『そこでプロの殺し屋がどんな手を打つのか、また、それにどのような対抗策を講じればいいのか、それを研究するために僕が君を雇った。』

MJ「……えっ?」

ミハイル『おかげで色々と研究させてもらった。もちろん君はミッションをクリアーできなかったのだからギャラはゼロだ。もっともクリアーしていたらお金を払う人間がいなくなってどっちみち君はタダ働きだったわけだ。命は助けてやるからありがたく思え。』

それだけ言うともう声は聞こえなくなった。

MJ「エメラダ国王は……わけがわからない。」
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