ー日常ー街の住人達【9】

ーアラファト家政婦派遣協会:談話室ー

前回、おマリは独特の声からカチンスキーの正体をお熊に話したところ……。

お熊「ワレンスキー牧師は顔を変えたカチンスキーだというの!?」

マリア「そうだとしか思えません。」

お熊「でも…そう考えれば、すべてつじつまが合うわ。協会がトロとイカの組み合わせを知っていたのも当然よ。カチンスキーはトロイカ体制の真っただ中にいたんだから。それに……協会がCHMに資金を提供した理由もね。なんのことはないトカレフとのいざこざで途切れた資金洗浄のための家政婦派遣会社計画をやり直しただけだったんだわ。」

マリア「なぜ宗教団体なんか作ったんでしょうか。」

お熊「たぶんマネーロンダリングのための、もうひとつの装置なのよ。発案者がトカレフかカチンスキー自身だったかは、わからないけれど……。宗教の影に隠れていれば国税局も手を出しにくいでしょうからね。」

マリア「なるほど」

お熊「とにかく教団とワレンスキー牧師ことカチンスキーのことを徹底的に調べる必要があるわね。CIAに連絡するわ。」

マリア「それじゃ私はお仕事に」

お熊「ダメよ」

マリア「えっ?」

お熊「教団を調査するために、おマリちゃんの力も貸してほしいから待機しててちょうだい。」

マリア「はあ…力を貸すといっても……私に、何ができるだろう。やっぱり変装して教団に忍び込めなんて言われたらいやだなぁ。」

おタネ「ただいまー、今日も疲れたわ。」

おばさん「あらおマリちゃん。こんな時間にくすぶってるなんて珍しいわね。」

マリア「お熊さんに待機してる様に言われたんです。」

おタネ「まぁ、堆肥してるの?」

マリア「待機です待機」

おばさん「なぜ待機を?」

マリア「まあ、ちょっと野暮用で」

おばさん「それより、ほら見てワレンスキー牧師のプロマイドを買っちゃったわ。」

おタネ「それをいうならブロマイドでしょ」

おばさん「「ブ」ロマイドは商品名だから「プ」でいいのよ。」

おタネ「いくら?」

おばさん「二千円」

おタネ「高いわねぇ」

マリア「(牧師が整形で顔を変えた元KGBだと教えてあげたいけど、でも、このおしゃべりなお姉さんたちに話したら明後日には日本中に噂が広まってそうだわ。)」

お熊「おマリちゃん」

マリア「あ、はいはい」

調べがついたらしく、別室に移動してお熊からくわしい話を聞くことにした。
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