ー日常ー街の住人達【9】

ー常春の国エメラダ:ミハイル宮殿ー

チコ「先方から返事が来ました。五百五十五万五千五百五十五円で納品してくれるそうです。」

ミハイル「理由は?」

チコ「なぜか社長の気分がイイとかで」

ムーン1「わからないなー」

ミハイル「ゾロ目号にコントロールされてるんだ。そんなことはどうでもいい!理由なんかどうでも構わん!とにかく研磨機を三十何万円安く買えた!ということはそれだけ稼いだのと同じだ!これからもゾロ目でもうけるぞ!ゾロ目号、バンバン注文するんだ!」

それから毎日注文してはゾロ目、注文してはゾロ目そんなことを繰り返すうちに……。

ゾロ目号「だめだ、気分が悪い。次も本当にゾロ目になるかどうかというプレッシャーにももう耐えられない。」

部屋の隅で膝を抱えていると廊下から話し声が聞こえてきた。

ムーン1「不気味だよなぁ。」

ムーン2「なぜ、ゾロ目号が注文すると、みんなゾロ目になるんだ。」

ムーン1「妖怪ゾロ目虫かなにかに憑りついてるんじゃないの」

「「ハッハッハッ」」

仲間にもそんな風に思われてるのかとこれが引き金となった。

ゾロ目号「殿下!もう、いやです!!もうたくさんです!ゾロ目をやめさせてください!」

ミハイル「ゾロ目号どうした!なにかあったのか!」

ゾロ目号「プレッシャーに押し潰されそうだし、仲間の皆からも気味悪がられているんです!」

ミハイル「仕方ないな。来い。」

あまりの切実さに殿下はゾロ目号をMCの前に連れていった。

MCがゾロ目号をスキャンして身体に異常がないか調べるも……

MC【ナニモトリツイテハイマセン】

ミハイル「おかしいじゃないか、それじゃどうしてお前はゾロ目体質なんだ。」

ゾロ目号「どうしてといわれましても……なんとなく777円のレシートあたりからこうなったような気がします。」

ミハイル「そのレシートは?」

ゾロ目号「取ってあります」

差し出されたレシートを殿下は凝視した。

ミハイル「なんだ、この和風スィーツというのは?」

ゾロ目号「これです」

今度は菓子の小袋を差し出してきた。

ミハイル「かりんとう?」

ゾロ目号「コンビニのオリジナル商品です。おいしいので毎日食べてるんです。」

チコ「殿下、コンビニに聞いたらそのカリントウ評判が悪くてまるで売れてないそうです。」

ミハイル「と、すると食べてるのはお前だけか」

ゾロ目号「えーっ、おいしいのになぁ。」

ミハイル「それよりここを見ろ」

ゾロ目号「原材料……えっ、ゾロメ?」

ミハイル「ザラメの印刷ミスだ。これを毎日食べてたからお前はゾロ目体質になったんだ。」

ゾロ目号「そんなことってあるんですか!」

ミハイル「もちろんだ。言霊だ。意味論だ。食べるのをやめればゾロ目ではなくなる。」

ゾロ目号「やめます!」

その後はゾロ目号には大したエピソードもないので……ここで終わりです。
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