ー日常ー街の住人達【9】

ー常春の国エメラダ:ミハイル宮殿ー

チコ「で、どうします?」

ミハイル「がまんだ。今はがまんするしかない。」

チコ「殿下にしてはえらく弱気ですね。叩きだすかと思ってました。」

ムーン1「殿下は女の子に弱いんだ」

チコ「え?」

ムーン1「とくにグイグイ出てくる女の子は大の苦手だ。」

チコ「ぜんぜん知りませんでした。」

ムーン1「なんにしても厄介なことになったな。」

チコ「まったくですね。」


~~


夕食時になってムーンのひとりがシンディーのいる客室のドアをノックした。

シンディー「入りなさい。」

ムーン3「失礼します。レディー夕食のお時間です。食堂へどうぞ。」

シンディー「食堂!?あたしに食堂なんかで食べろというの!」

ムーン3「えっ、殿下だって…」

シンディー「殿下は殿下、あたしはあたし部屋に運びなさい!」

~~

ムーン3「といってますが」

ミハイル「運んでやれ。」

ムーン3「はあ」

ムーン1「われわれがあんなわがままを言ったらすぐに死刑だ」

チコ「ほんとに苦手なんですね。」

~~

しかたなく、夕食を部屋に運んだのだがシンディーは不機嫌に叫んだ。

シンディー「なにこれ!パンとサラダとシチューだけ!?こんなもの食べられますか!あたしの夕食はフランス料理のフルコースと決まってるのよ!用意しなさい!」

という事を再び殿下に伝え得た。

ミハイル「ああ、もう……用意してやれと調理係に伝えろ。」

チコ「あの、殿下。それなんですが……」

調理係「フルコースなんてできませんよ。」

ミハイル「どうしたらいいんだ……。どうしよう、どうしよう。」

珍しく頭を抱えて悩む殿下。

チコ「あ、そうだ。殿下、エメラダ銀座にフランス料理のお店があります。」

ミハイル「それで?」

チコ「フルコースの出前を頼んだらどうでしょう?」

ミハイル「はあっ?フルコースの出前なんてできるのか?」

調理係「掛け合ってみます。もしもし?フルコースの出前を……えっ?そんなことやったことがない?そりゃそうでしょうね。そこをなんとか……料理がさめる?そこを工夫するのがプロとしての……ムチャをいうな?国王のミハイル殿下が頼んでるんですよ……いや、だから……あの……やかましーーーっ!国王命令だっつーとるのがわからんのか!四の五の言ってると営業許可を取り消すぞ!」

ムーン1「ずいぶん上からだな…」
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