ー日常ー街の住人達【9】

ーフランス:パリー

ひとの気配や物音、またどこか背中のむずがゆさに悩まされるのを数日間くり返して、会合当日……。

教授「(人面瘡など信じるわけではないが藻の音がするたびに背中が気になって眠れやせん。ああ、体調が悪い。)」

すると、ポンッと背中を誰かに軽くたたかれた。突然の事にギョッとして弾けるように振り返った。

パルン「大丈夫ですか」

教授「あ、ああ、大丈……その声、お前が連絡してきたやつか!」

パルン「最後の最後まで、油断はできませんよ。」

それだけ言うと足早にパルン号は人ごみの中へと消えていった。

教授「おいっ!くそっ、会合に遅れる!」

追いかけようとも思ったが、今は時間がないと教授は会合先へと向かった。

「携帯などの手荷物はこちらにお預けください。はい、どうぞ。」

「ボディチェックです。はい、どうぞ。」

「こちらのチェックゲートをお通りください。はい、どうぞ。」

いつものように何十にもボディチェックを受けて自分の席へとついた。すでにほかのメンバーは集まっており雑談や機密資料の交換などでにぎわっている。

あんなチェックで人面瘡は発見できんだろうなと考えていると。背中がチリチリ、ムズムズと違和感がしはじめた。しかも、そのザワザワ感たるや今までの比ではない。実際に背中が膨れだしている。

教授「ひっ!?まさか!!」

突然服を脱ぎだす教授に全員の視線があ募る。

「えっ!?」
「なんだ!?」
「なにごとだ!」

教授の背中にはこぶ状のふくらみができていて人の顔のような皺が浮かんでいた。

教授「人面瘡だ!助けてくれー!!」

自分の背中から逃げるように暴れまわり、会合は大混乱になった。

ボス「なにごとじゃ!」

「うわっ!」

騒ぎの中、暴れまくる教授にぶつかってこけた一人がボスの靴をチェックした。


~~

ヒマナ『赤い靴ですかわかりました!ビルを見張っていた助手が人面瘡と叫びながらメンバーが飛び出してくるのを目撃したそうです!さすがは殿下の究極変装感服つかまつりました!』

ミハイル「いやいや、また何かあったら力になりますよ。それじゃ……どうやった?」

パルン「まずメンバーの中でがめつそうなやつを調べ、脱税の容疑をつかみました。バラされたくなかったら靴の色を調べて報告しろ、その代わり協力したら多額の現金を払うと持ち掛け篭絡して、次は、神経質そうな奴を寝不足にさせて、ただでさえ体調を崩しているところにボンッとCIAの使う毒針指輪(ポイズンリング)で、背中に漆の成分を注入。ストレスから吹き出物ができるのは誰でも経験することですが人間の肌は、精神状態にたいへん左右されやすいのです。人面瘡の心配をしてる時、背中に強烈な違和感を覚えれば、おそらく望む結果を得られると期待はしていました。まさか本当に人面瘡に見えるような、みごとな腫物ができるとまでは予想していませんでした。」

ミハイル「ふーむ。催眠術でイボを消したりすることもできるそうだから、暗示の力で人面瘡を誘発したわけか」

パルン「はい」

ミハイル「見事な働きだった礼を言うぞ。」

パルン「それにはおよびませんがガメついやつへの支払いをお願いします。」

チコ「一、十、百、千…………うわっ、これはがめつい。」

情報部からもらう予定の謝礼より、はるかに大金だったので、ミハイルが大損こいたというお話。
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