ー日常ー街の住人達【9】

ー某所:大学教授室ー

P氏の元に一通の封筒が届いた。その中には人間の背中に顔のようなものが張り付いている。いや、生えているといえばいいのか、とにかくおぞましい写真だった。

教授「なんだこの気味の悪い写真は」

すると電話が鳴った。

『もしもし写真が届きましたか。』

教授「こんな気味の悪いイタズラをする君は誰だ。」

しかし、電話相手は教授の問いを無視して話を続けた。

『そいつは人面瘡に化けてひとに憑りつき、情報を収集する一流のエージェントでしてね。』

教授「なっ、なにをバカなことを!こんなものに変装するなんて映画の中でもありえない話だ!」

『それが現実なんですよ。なんでも日本のニンジュツから体得した技だそうでげんに私は、以前そいつにひどい目にあわされたんだ。あなたには恩も義理もないが、そいつがあなたを狙っているという情報をキャッチしたのでこうして警告しているわけさ。』

教授「なにかの間違いではないかね。わしはただの大学教授だが」

『秘密結社の会合が迫ってますねぇ。』

教授「……」

『気がついたら背中に人面瘡が張り付いていたなんてことのないように……せいぜい気を付けるんですな。』

そういい切ると電話は切れた。人面瘡などバカバカしいと送られてきた不気味な写真をビリビリに破く一方、心の隅では自分が秘密結社のメンバーだと知られていた……という疑念も残った。

その夜、自宅の風呂で自分の背中を鏡に映してみたもちろん人面瘡などはない。

『日本のニンジュツから会得した…』

ニンジュツか、想像を絶する鍛錬で人知を超えた技を駆使するものもいるそうだが……ふん、くだらん。

疑念を払うように一周すると寝間着に着替えてすぐに床へと着いた。

チッ…チッ…暗闇の中で時計の音だけが耳に響き、眠りにつけない。

突如、風もないのにガタガタと窓が揺れたベッドから身体を起こしてカーテンを開けた。目を凝らして外を見てみるも人の気配はない。

気のせいかと思ったら、背中が急にゾワゾワとなった。慌てて服を脱いで鏡の前へと走った。まさかまさかと思ったが……鏡に映る背中には異常はない。

教授「なにもない……なにもない!あたりまえだあるわけがない!」

気のせいか、背中が、むずがゆくその夜、教授は眠れませんでした。
70/100ページ
スキ