ー日常ー街の住人達【9】

ー家政婦派遣会社:CHMー

人事担当者「失礼します。」

マリア「失礼します。」

会長室へと案内された。一礼して中へ入ると壁にかかっているものが目についた、坊主頭の男の肖像画が飾られている。

人事担当者「……会長というわけでして」

会長「そうですか。美空さん、よろしくお願いします。」

ずいぶんと若い会長で肖像画の人物ではない。

マリア「こちらこそ。ところで、つかぬことをうかがいますが、あの写真の方は?」

会長「黄昏の10月教団のジョージ=ワレンスキー牧師。我がCHMの大恩人です。」

マリア「恩人といいますと?」

会長「派遣村が閉鎖されみんなが路頭に迷いかけた時ある方たちからとてもありがたいお話をいただきましたた。つまり、家政婦派遣会社を
つくって派遣切りにあったひと達を雇ってくれるというのです。みんな、とても喜びました。ところが、あるときからその方たちと連絡が取れなくなり、、会社の話は空中分解、途方に暮れていたら、どこで聞きつけたものか……」

黄昏の10月教団の者です。ワレンスキー牧師はせっかく派遣切りにあった人たちのために作られようとしていた会社の計画が頓挫していたことに心を痛めております。教団が資金を提供しますから、もう一度家政婦派遣会社を作られては如何ですか、とのことです。

会長「というわけでできたのがCHMです。牧師様はわれわれ全員の大恩人なのですよ。私は会長と呼ばれていますが、いわば飾り物の雇われ会長で実質の運営は教団がやっています。私は教団の指示に従っているだけです。」

マリア「えっ、恵方巻も!?」

会長「教団の指示です。何やら重要な布教の一環だそうです。どういうことか、私にはわかりませんがしかし牧師様のお考えに間違いはありません。」

マリア「(CHMの背後にいるのは!黄昏の10月教団!)」

話していると、外から叫び声が聞こえてきた。

人事担当者「なんだ?」

受付の方へと戻ってみると男が大声で怒鳴っていた。

「恵方巻を出せ!」

CHM員「ですから五千円を!」

「金がないんだ!いいから出せーー!」

男はポケットからナイフを取りだして暴れ出した。人事担当者に突っこんでくる。

人事担当者「ひぇっーー!」

マリア「あぶない!」

とっさの判断でおマリは男の後ろ飛びかかってきりもみになりながら転がっていき壁に激突する。

ナイフは手から外れ男もどうやら気絶したらしい。

人事担当者「おお、美空さんよくやった……ん?その顔は!」

マリア「(しまった!)」

どうやら転げまわってメイクが崩れてしまった。おマリの運命は……。
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