ー日常ー街の住人達【9】

ーアラファト家政婦派出協会:談話室ー

マリア「そして、彼らの背後にいる真の黒幕は誰なのか」

お熊「よくできました。もちろん、それらはトップシークレットでしょうから、簡単に調べがつくとは思えないわ。家政婦としてもぐりこんだら、2.3カ月かけて信用させて中枢に近づいていくしかないでしょうね。」

マリア「2.3ヶ月!?」

お熊「そりゃそうよ。」

マリア「大変なことになってきちゃったなぁ。会長の命令だからがんばりますけど、でも、そのあいだは私の仕事はどうしましょう。」

お熊「おタネさんたちに代わってもらうわ。おマリちゃんくれぐれも気をつけてね。」

マリア「気を付けるって」

お熊「CHMの正体はわからないのよ。もしも裏で暗黒街とつながりがあってあなたが探りまわってることがばれたりしたら。」

マリア「ばれたりしたら?」

お熊「ドラム缶に詰められて東京湾に沈められるかも。」

マリア「……なんだかものすごーーーく行く気がしなくなってきたんですけど。」

お熊「大丈夫よ。万一の場合は」

マリア「すぐに助けに!」

お熊「立派なお葬式を出してあげるから」

マリア「ははっ、お熊さん。そんな心強いセリフを聞いたのは生まれて初めてです。殴っていいですか?いいですよね。これはもう殴りますね。」

お熊「冗談よ。緊張した顔つきで行って疑われちゃまずいからリラックスさせるためのジョークをいったのよ。」

マリア「ぜったいジョークの方向性が間違ってると思います。」

お熊「いいから行ってらっしゃい。頑張ってね。」


~~


足取り重いまま、なんとか覚悟を決めてCHMの会社の前までやってきたのだがそこには長い行列ができていた。

マリア「あら、なんだろう。この行列は。」

行列の先頭付近では何人かのCHM員が並んでいて拡声器で何かを話しだした。

CHM員「皆さま、新工場は規模が小さいため充分な数の恵方巻きを生産することが、できません。したがいまして一本五千円という金額をお支払いいただけるお客様のみ販売させていただいております。」

それを聞いても列からひとが離れる様子はない。それどころか色々と会話も聞こえてくる。

「一本五千円はメチャクチャ高いけど」

「でも食べないと気が済まない。」

「一本を三つに切って、三日に分けて食べようと思ってるんです。」

「それでもないよりはましですからね。」

マリア「中毒患者の足元をみて、あくどい商売をやってるなぁ。」
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