ー日常ー街の住人達【9】

ーフランス:ゴート子爵邸ー

ミハイル「ガラスが割られたとき、子爵は子供のいたずらかと思ったのでしょう。しかしここはお屋敷の敷地内で近所の子供が通りすがりに石を投げたりするロケーションではない、ということは」

ヒマノ「ということは?」

ミハイル「パチンコ、トリモチ、ラジコンカー、これから連想できるように、当時この屋敷には、いたずらをしそうな子供が住んでおり。体重30キロにも満たない、その子供こそが犯人であると推測されるのです。」

ヒマノ「葬儀に参列した弁護士はまだ帰ってないはずです!」

殿下の推理を聞いたヒマノは慌てて弁護士を連れてきた。

弁護士「20年前ですかえーと……ああいましね。下働きの女性の子供で5歳ぐらいの男の子が」

チコ「5歳の子供がほとんど完全犯罪を?」

ミハイル「常識で判断しないほうがいいですよ。」

弁護士「名前は確か……パルン君」


その名を聞いてミハイルはヒマノとチコの首をひっつかんで宮殿へととんぼ返りした。

ミハイル「犯人はお前だ!」

パルン号「は?」

ミハイル「お前こそ天才的ドロボウ少年だったのだ!」

パルン「褒められてるのかけなされてるのかわかりませんが。違いますよ。」

ミハイル「とぼけるな!お前のことは全部調べた!おまえは18年前療養していた母親が亡くなったといってエメラダ在住の親戚を訪ねたのだ!手土産がわりと称して多額の現金をもってな!やがてその家の養子になりエメラダ高校エメラダ大学を卒業して陸軍からムーンに転属になったわけだが当時7歳だったお前が何処で大金を手に入れたか!病気だった母親を入院させるためにゴート子爵から盗んだ宝石を売りさばいたに違いあるまい!」

パルン「宝くじが当たったんですよ」

ミハイル「なっ、ならあのエメラルドはどう説明する!」

パルン「エメラルド?どの?ベッドの下にエメラルドなんか隠してませんよ?」

ミハイル「なっ!(なんて敏感な奴だ。誰かに部屋を探られたことをもう察知していたのか。)……お前のことだエメラルドは絶対に発見されないところに移してしまったんだろうな。」

パルン「どうしても僕をドロボウにしたいらしいですが、しかし証拠はない。」

ミハイル「そうだ全部僕の推理に過ぎない。ではたとえ話として聞こうかつて盗みを働いた人間が新人教育係になるのはいいことか悪いことか」

パルン「善悪とは相対的なものです。ものすごく悪い人間がたとえば、なんとか子爵が単純な窃盗よりもっと悪いやり方で手に入れた宝石を誰かが拝借したとしても、それを、一概に犯罪とは言えないでしょう。」

ミハイル「法律的には明らかに犯罪だ!」

パルン「法律は道徳律の下に位置するものです。僕もたとえ話で答えますが、もしかしたら近い将来どこかの機関に世界中の恵まれない子供たちの役に立ててほしいと高額の小切手が届けらるかもしれない。それがエメラルドを売ったお金だった場合、宝石が子爵の手元にあるよりもずっと世の中のためになります。本当にいいこととは何かを自分の頭で考える姿勢を新人に教えるのが僕の役目だと思います。失礼。」

ミハイル「恐るべき奴だ。このまま優秀なんとして一生を送るかもしれないが、もし放りだしたらタガがはずれてとんでもない大犯罪者になりかねない。」

ヒマナ「ですね」

というわけでパルン号は今でも教育係です。ムーンには本当にいろんな人間がいるのです。
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