ー日常ー街の住人達【9】

ーフランス:ゴート子爵邸ー

ヒマナ「当時現場近くにいたのは執事ただひとり、当然子爵は彼が犯人だと思い、おどしたりすかしたり、さらには下男に命じて、いためつけたりさせましたが、知らぬ存ぜぬの一点張り。とうとうどこからかウソ発見器を入手して執事を調べたところ明らかにシロ。そこでようやく犯人は別にいると納得したわけです。」

チコ「その後、執事さんはどうなりましたか?」

ヒマナ「すぐにやめたそうです。」

チコ「でしょうね。」

ヒマナ「それから探偵や捜査員を雇って調べさせたそうですが犯人はおろか犯行の手口すら特定できませんでした。」

チコ「ええと……警察には届けなかったんですか?そんな大きなエメラルドが盗られたなんて大事も大ごとですよね。」

ヒマナ「宝石の多くは盗品でね。」

チコ「えっ?」

ミハイル「えっ?」

ヒマナ「私も下調べをしているときに分かったのですが個人は評判の悪い人物で人呼んで強盗子爵。犯罪スレスレの悪どい真似で富を築いたのです。コレクションも盗品と知りながら安く買いたたいたもので、エメラルドこそ盗品ではなかったようだが、警察にしらせたらまずいような入手手段で手に入れたんじゃないですかね。」

ミハイル「やれやれ」

ヒマナ「前月、友の会の紹介で呼ばれてきたのですが死期を悟っていたのでしょうな、20年前の事件を解決しなくてし死んでも死にきれないといわれて、やむをえず調査を引き受けたのです。」

ミハイル「解決しましたか?」

ヒマナ「残念ながら。」

ミハイル「あなたは確か名探偵友の会の準会員でしたね。」

ヒマナ「ええ。」

ミハイル「正会員の僕は即座に真相を見抜きましたよ。」

ヒマナ「もう!?」

チコ「本当ですか?!」

ミハイル「まず犯人がドアから忍び込んただとは考えられません。子爵がちょっと振り向いたら姿を見られてしまうわけですから透明人間でもない限りそんな危険を冒すはずがない。」

チコ「ということは犯人は部屋の中に隠れていたことになりますね。」

ヒマナ「それは私も考えましたが、残念ながら人が隠れられそうな場所はありません。」

たしかに子爵の私室は個人で使うものとしては広い部屋ではあるが出入り口は一つで大きな箪笥みたいな中に入れたり、人が隠れられそうな場所はない。

ミハイル「上はどうです。」

殿下は天井を指さした。豪華なシャンデリアが吊るされているものの人が掴まったり、潜めそうな場所は皆無である。

ミハイル「犯人がどうやったかはわからないが、例えば窓の外の木の枝にパチンコを仕掛けてヒモの先をラジコンカーか、なにかに結び付けておきコントローラーで走らせれば、ヒモがほどけてパチンコの石が窓ガラスを直撃する。子爵が気を取られているスキにシャンデリアの上からトリモチのようなものを降ろして、すかさずさっと引き上げれば宝石消失事件の完成です。」

ヒマノ「お言葉ですがシャンデリアの上に隠れる可能性は私も考え錘をぶら下げ計測してみましたが30キロが限度でした。」

チコ「大人の体重には耐えられませんね。」
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