ー日常ー街の住人達【9】

ー常春の国エメラダ:ムーン用宿舎ー

狙いをベッドに定めた。何かを隠すとしたら定番はベッドの下だ。手を入れて探ると何かを掴んだ。引っ張りだしてみると布に包まれた硬い塊。

ミハイル「なんだこりゃ」

ためらいなく包みを取るとゴロンと大きな緑色の宝石が出てきた。ミハイルは一瞬固まり、その宝石をしばし眺めて布で包み直すと藻とあったベッドの中へと突っこんで宿舎から飛び出した。

何者だあいつ。

チコ「あ、殿下いったいどこへいって…」

ミハイル「調べものがある!誰も部屋に入れるな!」

チコ「ええっ…」

部屋にこもるとパソコンを起動した。

レプリカなんかじゃない40カラットはあろうかという恐らく世界最大級の本物のエメラルドだった。なぜ一介のムーンがあんなものを持っていたのか。

ダイヤモンドやサファイアなら、もっと大きい石もありますが、エメラルドではこれがもっとも大粒の部類です。もともと大きな原石が少ないうえにエメラルドはとても割れやすいのです。1メートルの高さから落としたら間違いなく割れるというぐらい劈開性が強いのに、その昔はトンカチで叩いて割れなかったら本物のエメラルドだというデマが信じられていたので大粒の石は全部割られてしまいました。

ですから、40カラットはとても珍しいのです。

ミハイル「あれだけの逸品なら、必ず経歴が記録に残ってるはず。……むっ、これか!グリーン・コンチネント(緑の大陸)41カラット、かつての持ち主は…うわお、法王から王様まで歴史上の有名人が名を連ねてる。めぐりめぐって最後の所有者は……フランスの大富豪ゴート子爵か。おかしいな30年前に手に入れて以来、売却したとも何とも記されてないのに、なぜエメラダにあるんだ。……本人に聞いてみよう。」

ミハイルは考えるより先に行動するタイプです。

部屋の外の廊下で待機していたチコに縄をかけると、機械仕掛けの魔法の絨毯(殿下作成)流星号に乗って部屋から飛び出した。

チコ「キャーッ!キャッーー!」

ミハイル「は~♪朝もはよからカンテラ下げて~~」

でたらめな歌と悲鳴をまき散らしながらの空の旅。

【目的地まであと2キロです。】

ミハイル「あれか。」

大富豪らしい邸宅が見えてきた。近くで停止して流星号から飛び降りる。

チコ「ぜぇぜぇ……死ぬかと思った……」

ミハイル「なんだ乗り物に乗ったぐらいで情けない奴だ」

チコ「縄で縛られて吊るされたまま連れてこられる行為を乗り物に乗るとは言わんわい!!」
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