ー日常ー街の住人達【9】

ーミハイル宮殿:出入り口前ー

ムーン1「血を作る食物を大量に食べていただくのだ!」

「「おお、その手があった!!」」

一斉に散ると、血をつくる食べ物の代表格レバー、シジミやアサリなどの貝類、鉄分の多いホウレン草、小松菜などをかき集めてきた。

チコ「はい、食べて!」

ミハイル「がふがふ、わざわさっ!」

チコ「血をつくって!」

ミハイル「うーんうーん」

少しして殿下は指先の腹をちょびっとだけ刃物で切った。そして止まっている蛇口に血を数滴たらすと、一気に水が流れだした。

チコ「回復した!」

「「「オーーッ」」」

次はテレビ、次は椅子、次は……と次々に血をたらしていく。そのたびに色々な物が回復して元通りになっていくのだが……。

ミハイル「うっ、いかん血が不足してきた。」

チコ「はい、食べて!血をつくって!」

ミハイル「うおおおっ!」

そんなことを繰り返すこと丸三日。
三日目の夜。

ムーン1「やった!すべての機能が回復したぞ!」

ミハイル「ふつうの……人間だったら…死んでるぞ。」

とうぜん血を出し過ぎて青白く死人みたいな顔になっている。

チコ「さすがは殿下、人間離れしていらっしゃる!」

ミハイル「もう貝もレバーもほうれん草も見るのも嫌だ。」

料理長「でも無理をした分、食べないと身体が持ちませんよ。精をつけるための肉料理ハンバーグです。アルミの食器でどうぞ。」

ミハイル「ハンバーグなら。アム、おお、うまいうまい、うまいうまい、うまいうまい。」

がつがつとハンバーグを食べ続けていた殿下だったが突如「痛い」と叫んだ。それもひとりではない周りにいた全員が急に頭を押さえだしたのだ。

チコ「頭が割れるように痛い!」

ムーン1「みんながいっせいに頭痛なんて変だぞ!」

ムーン2「もしかしてまた魔法が!?」

ムーン3「赤竜をしらべろ!」

チコ「あった!」

ミハイル「なんと書いてある!」

チコ「満月から三日目の夜にアルミの食器で牛肉を食べて、マイマイと三回唱えると発生する頭痛魔法です!」

ミハイル「そんなアホな!解除方法は!?」

チコ「また血です!」

ミハイル「もういやだー!」

当然、現在進行形で貧血気味のミハイルは逃げ出した。

ムーン1「捕まえろ!頭に血を振りかけないと一生このままだぞ!押さえつけて無理やりレバーやほうれん草を食べさせるんだ!」

そして翌日……。
もはや青白いを通り越して土色でカサカサになっているミハイル。

チコ「宮殿中の人間二百人に血を振りかけるのに一晩かかりましたね。」

ムーン1「殿下から血をしぼるのは大変だったな。」

ミハイル「勝手なことをいうな~一番大変だったのは僕だ~」

チコ「術者の責任ですよ。」

ミハイル「なにか食べると魔法がかかるもうなにも食べないぞ~」

ムーン1「食べなきゃ死んじゃいますよ」

ミハイル「誰が何と言おうと食べないぞ、絶対に食べないぞ」

すると急にあたりが真っ暗になった。

チコ「えっ!?朝なのに急に暗くなった?」

ムーン1「なんだ?」

ミハイル「まさかまた!?」

懐中電灯で照らしながら魔法書を探る。

チコ「ありました暗黒魔法です!」

ミハイル「原因は!?」

チコ「満月から四日目の朝何も食べずにナイゾナイゾと三回唱えると!」

ミハイル「誰か何とかしてくれーーー!!」
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