ー日常ー街の住人達【9】

ーミハイル宮殿:出入り口前ー

チコ「なんでも食べるじゃないですか」

ミハイル「何を食べているか理解して食べるのと、何を食べいるのか理解していないまま食べるのは意味が違う!」

チコ「とにかく、殿下は蛙を食べています。」

ミハイル「むっ、だけど呪文だ!呪文は唱えてないぞ!当然だろう!知らない呪文を唱えられるわけがない!」

チコ「そうでしょうか?」

ムーン1「確かきのうカエルの目玉の夕食後に」

ミハイル「だから!」

ムーン1「物置で見つけた古い肖像画をお見せしたのを覚えているでしょう」

そう、昨夜物置から出てきた変わった肖像画。それには杖を持ったスイマーのような恰好をした恰幅の良い中年男性の絵が描かれていたのだが……。

ミハイル『誰だ、この赤ら顔でデカ腹で三段腹のじい様は』

ムーン1『えっ?』

ミハイル『誰だ、この赤ら顔でデカ腹で三段腹のじい様は』

ムーン1『はっ?』

ミハイル『誰だ、この赤ら顔でデカ腹で三段腹のじい様は』

ムーン1『ああ、目録によると水泳好きだった三代前の国王ひいおじい様です。』

「アカラ」がおで、で「カバラ」で、さん「ダンバラ」の

チコ「よけいな文字がくっついていてもキーワードさえ押さえれば呪文は成立すると魔術書には書かれています。」

ムーン1「殿下が魔法をかけたんですよ!」

ミハイル「お前たちがよってたかってかけさせたんじゃないか!」

チコ「責任のなすり合いをしてる場合じゃありませんよ!このままだとエメラダ中に停滞魔法が広がります!」

ミハイル「たいへんだー!」

ムーン1「解除の方法は!」

チコは魔導書をパラパラめくっていく。

チコ「ええと、あった!」

ミハイル「どうするんだ!」

チコ「機能を失ったすべてのものに、術者の血を数滴ずつかけ、ひとつずつ魔法を解除する!これ以外、方法はない!」

ミハイル「ひとつずつ?宮殿中の電気製品や椅子や机や本にひとつずつ!?」

チコ「そうです!水道やペンや消しゴムもひとつずつです!」

ミハイル「アホか!たとえ数滴ずつでも、全体ではものすごい量が必要になる!体中の血をしぼったって足りんわい!」

ムーン1「魔法が広がったら国中そのものが機能を失ってエメラダは滅亡します!」

ミハイル「どうすりやいいんだー!」

チコ「殿下!血を作りながらやるしかありません!」

ミハイル「血を作る!?」
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