ー日常ー街の住人達【9】

ー一軒家:後先邸(仮)ー

CHM員「お掃除お洗濯終了しました。」

マリア「昼食は何かしら。」

CHM員「本部から恵方巻を持参させていただきましたー。」

マリア「恵方巻!?えらく季節はずれな物を持ちだしたわね。あれって節分に食べるんじゃないの?」

CHM員「古来より立春立夏立秋立冬の前日を節分と申しまして、その日に困難に打ち勝つ「不撓」に通じる「太」巻を食べる風習が江戸時代、大阪の船場で生まれました。一時期すたれましたが1977年ごろ復活いたしまして、以来全国に広まったわけでございます。当CHMでは、せっかくの福を呼ぶ食べ物を一文に一度しか食べないのはもったいないと考えて本部直営の食品工場で特製の恵方巻を製造し、お客様にご提供させていただいておりますわけなのでございます。一年に2回食べれば、2倍の福が3回食べれば3倍の福が毎日食べれば365倍の福が訪れるわけなのでございまーす。」

マリア「縁起の良さそうな話ではあるけど問題は味ね。」

CHM員「それはもう保証付きでございます。西南西ですからあちらを向いて、無言のまま一気にお食べください。」

マリアは言われた通りの方に向いて恵方巻に齧りついた。CHM員が言った通り味は確かに悪くない。

マリア「おいしいからあっという間に食べちゃったわ。具材は?」

CHM員「ロシア産のマグロとイカがメインです。マグロはトロの部分を使用しておりましてイカとのマッチングが絶妙です。お客様全員にたいへんご好評いただいておりますのでーす。」

ひと通りの作業を終えたCHM員に明日も仕事をたのみ、その日は何事もなく終えた。仕事面で特に目立ったポイントがあったわけではないが強いて言えば恵方巻が美味しかったことぐらいだろうか。しかし、それだけでリピーターが増えるわけではない。まだ調査が必要だ。

そして次の日

マリア「待ってたわ。今日もお昼は恵方巻?」

CHM員「もちろんです。どうぞ」

マリア「楽しみにしてたのよ。」

CHM員「それはよかったですわ。」

そんなことが数字続くと、マリアは次第に恵方巻が食べたいなぁとつどつど思うようになっていた。

明日は3食恵方巻にしてもらおうか、ああ、なんだか我慢できない……。そこでハッとなってマリアは電話をかけた。相手はお熊だ。

マリア「おかしい!あとをひく味といえば聞こえはいいんですが強い習慣性があるんですよ、あの味には!なにか薬物でも混ぜてるんじゃないでしょうか!もし、そうだとしたらあの恵方巻めあてにお客さんがCHMに流れている可能性が!」

お熊『分析する必要があるわねサンプルを手に入れてちょうだい。』
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