ー日常ー街の住人達【9】

ーアラファト家政婦派出協会:会長室ー

マリア「……つまり?」

会長「つまりではない、おマリ、お前じゃ」

マリア「なぜわたしが?」

会長「おマリや、わしが中野学校時代からお世話になっていた君のおじい様は後年、陸軍特務部隊の責任者として満州やロシアで大活躍されたのじゃ。実に巧みな完璧な変装術を駆使してな。」

マリア「へんっそう!とろというんですか、このわたしに!会ったこともないおじいちゃんがどんな変装の名人だったか知りませんが、わたしに出来るわけないでしょーがっ!!」

会長「カエルの孫はカエルじゃ!」

マリア「うわー声の大きさでは負ける。」

会長「夢前平八郎大佐の血を引くおまえならきっとみごとな変装ができるはず!できるとき、できねばできるにちがいないできろ!さ行変格活用。」

マリア「違うと思いますよ。」

会長「というわけで資料を用意した。」

マリア「えぇっ…。」

変装術に関する書籍、ビデオ、DVD、その他メーク道具一式が山のように準備される。

会長「このスパイ大作戦の成否および、わが協会の生き残りは、お前の肩にかかっておるのじゃ。別室で心行くまで研究するように。」

マリア「はぁ…」

お熊「おマリちゃんあなたなら大丈夫。奥さまメークは得意だったじゃない。」

マリア「できるのはアレだけですよ。」

お熊「とりあえずやってみなさい、ね。」

ということになり、おマリは山のような道具と一緒に別室に移動して頭を抱えた。

いきなり変装といわれても素人がそう簡単にできるわけないのにと愚痴りつつ変装入門(著:ミハイル)という本に目を通した。


~~


会長「いかに天才のお孫さんでも変装術をある程度、体得するのに2カ月はかかるじゃろう。」

お熊「問題はそのあいだにCHMが……」

対策会議を続けていると小柄なお婆さんが入ってきた。

「あのー」

番頭「なにかねバアさん。ああ、家政婦募集のチラシを見てきたなら、受付で書類をもらいなさい。」

「いえ、あのー」

番頭「だから、書類に記入して人事部に提出して適正審査はそれからだよ。」

マリア「いえ、あの私です。マリアですけど。」

番頭「……」
お熊「……」
会長「……」

「「「ええっ!?」」」

番頭「まさか!」

会長「おマリ!?」

お熊「おマリちゃんなの!?」

番頭「信じられん!どう見ても見知らぬバア様にしか見えない!」

会長「夢前大佐の変装もこれほど完璧もではなかったぞ!」

お熊「すごいわ、おマリちゃん!」
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