ー日常ー街の住人達【9】

ー玉木邸近くの茂みー

人の気配が近づいてくるのを察知しておマリは様子を探った。ボヤッとしか見えないが人影がこっちに近づいてきている。

人影は一つ、チャンスは今だとマリアは茂みから飛び出した。

化け物「モモンガーーー!」

玉木「ッ!!!?」

人影は一瞬硬直して走りだした。驚き過ぎて声も出なかったらしい。これは幸いとそのあとを追いかけた。

化け物「モモンガ、モモンガ、モモンガーーッ!!」

玉木「ギエエエッ!!」

着かず離れずで叫びつつ追いかけまわしていると、玉木兵六は悲鳴をあげて倒れてしまった。どうやら気絶したらしい。

しかし、聞こえてきたのは女の悲鳴ではなく男の声だ。おマリは自分が追いかけまわしておどかしていた相手がCHM員ではないとようやく気がついた。しかも、聞いたことのある声……。

着ぐるみを慌てて脱いで見てみると泡を吹いて倒れている玉木様の姿だった……。

マリア「わーっ玉木様!し、しーらないっと!」


~~


玉木兵六を放置した翌日、お熊に昨日のあらましを話した。

お熊「まあ、そのまま逃げちゃったわけ?」

マリア「つい、こわくなりまして。その後どうなったかと思って、先ほど玉木様のお宅にうかがったらお顔の色は悪いんですが、わりとお元気で」

~~

玉木『CHMのあの娘が倒れてるわしをみつけて介抱してくれたんじゃ。しかし、さっきお化けに襲われたと話したらやめさせてもらいますと言って悲鳴を上げながら逃げていきおった。』

マリア『(とりあえず目的は達成したわけか)ゆうべは悪夢をごらんになりましたか?』

玉木『チラッと見たような気もするが……。しかし、現実にあんな化け物に襲われたら夢なんぞこわくもなんともない。』

マリア『そ、そうですか』

玉木『おマリや、今まで週に二日じゃったが、明日から毎日通ってくれんか?』

マリア『はっ?はい……』

玉木『いつまた、あの化け物に出くわしてとり殺されるかわからん。しかし男、玉木兵六、逃げも隠れもせんつもりじゃ。これから毎日お前のうまい料理を腹いっぱい食って、好きなカラオケを歌いまくって死ぬ時が来たら潔く死ぬまでじゃ!人生、楽しむぞーー!』

~~

マリア「というわけで、たいへん前向きにおなりでした。」

お熊「終わりよければすべて良しね。」

マリア「というか結果オーライ」

お熊「まーね。」
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